宅地建物取引業(以下「宅建業」といいます。)を行う場合には、従業員数に応じて、宅地建物取引士(以下「宅建士」といいます。)を設置しなければなりません。また、宅建士には、無資格者にはできない独占業務がある点も特徴です。
独占業務があり、士業と呼ばれる職業の中でも知名度の高い宅建士ですが、一般的には難関資格に分類されます。そのため、「実際、どれくらい難しいの?」「不動産業で勤務していなくても合格できるの?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、宅建士試験の難易度と合格率について解説します。試験概要やメリット、注意点なども説明しますので、資格取得を検討している方は、ぜひ読んでみてください。
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宅建(宅地建物取引士)とは?
宅地建物取引士は不動産取引における専門家で、公正な取引を行うために必要な知識を持った国家資格者のことを指します。
宅地建物取引業法(以下「宅建業法」といいます。)第3条第1項において、宅建業を営もうとする者は、国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受ける必要があります。
また、宅建業法第31条の3において、宅地建物取引業者は、その事務所その他国土交通省令で定める場所ごとに、事務所等の規模、業務内容等を考慮して、5人に1人以上の割合で、成年者である専任の宅建士を置かなければならないとされています。
なお、平成26(2014)年度までは「宅地建物取引主任者」という名称でしたが、平成27(2015)年4月1日からは、「宅地建物取引士」に名称変更されています。
宅建の仕事内容
宅建士の主な仕事内容は、不動産の売買や賃貸です。
売買の場合は売主と買主、賃貸の場合は貸主と借主との間に立ち、不動産に関する専門知識をもって、スムーズな取引を行うための手助けをするのが主な役割といえます。
なお、宅建業法第15条においては、「宅地建物取引士は、宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならない。」とされています。
宅建の独占業務
不動産のプロフェッショナルである宅建士ですが、宅建士にしかできない「3つの独占業務」があることをご存知でしょうか。
独占業務とは、特定の資格がなければすることができない業務のことで、宅建士はニーズの高い独占業務を持っていることが特徴といえます。
1つめは「重要事項の説明」、2つめは「重要事項説明書(35条書面)への記名」、3つめは「契約書(37条書面)への記名」です。それぞれどのような業務なのか、順に見ていきましょう。
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書(35条書面)への記名
- 契約書(37条書面)への記名
重要事項の説明
独占業務の中でも特に重要なのが重要事項の説明です。建物や土地などの不動産を買おうとする人や借りようとする人に対して、宅建士が、契約を締結する前に、その不動産に関する重要な事項を説明することを重要事項の説明といいます。
例えば、水害ハザードマップの提示や津波災害警戒区域であることの告知といった人の生命にかかわる事項について説明をしなければなりません。かつては、近隣の営業所に赴き重要事項の説明を受けるのが主流でしたが、近年は、Web会議によるIT重説も普及してきています。
重要事項説明書(35条書面)への記名
不動産取引において重要事項の説明を受ける場合、口頭のみでつらつらと説明されても、不動産の素人である買主や借主には、なかなか理解できません。
そこで、重要事項説明書という書面を交付しなければならないことになっています。
この重要事項説明書に記名することができるのは宅建士だけなのです。なお、宅建業法第35条に重要事項説明書に関する規定があることから「35条書面」とも呼ばれています。
契約書(37条書面)への記名
これまで見てきた重要事項の説明を経て、いよいよ契約を締結する段階になると、代金や引渡しの時期などの取引内容を記載した契約書を取り交わすことになります。
通常の売買契約書には、売主と買主の記名・押印しかありませんが、不動産の契約書には、宅建士も記名を行うこととなっています。
かつては宅建士の「押印」が必須となっていましたが、現在は、押印不要となっています。ただ、実務的には、押印をする文化がまだまだ根付いているようです。なお、宅建業法第37条に契約書に関する規定があることから「37条書面」とも呼ばれています。
宅建(宅地建物取引士資格)試験の概要
資格試験においては、その試験を受験するために、一定の要件を満たす必要があるものがあります。例えば、司法試験においては、法科大学院(ロースクール)課程の修了、または司法試験予備試験の合格等の条件を満たした人だけが、司法試験を受験することができます。
これに対して、宅建士試験を受験するための条件はありません。何歳でも、どのような学歴であっても、不動産業に従事していなくても、はたまた日本人でなくても受験することができます。受験資格がないことが宅建士試験の大きな特徴といえます。
宅建(宅地建物取引士資格)試験の手数料
次に、試験を受験するにあたっての手数料についてです。
令和6年度試験の受験手数料は8,200円となっており、他の資格試験と比較しても、決して高くはありません。
申込みは、郵送とインターネットによる方法がありますが、受験手数料に加え、郵送の場合には郵送費用、インターネットによる場合には264円の払込事務手数料がそれぞれ必要となります。
試験申し込み方法 | 受験手数料 |
---|---|
郵送による申し込み | 8,200円 |
インターネットによる申し込み | 8,200円+事務手数料264円 |
宅建(宅地建物取引士資格)試験の形式
宅建(宅地建物取引士資格)試験の形式は以下の通りです。
試験日 | 例年「10月の第3日曜日」実施 |
---|---|
試験形式 | マークシート(4肢択一式) |
試験問題数 | 50問 |
出題科目 | 権利関係 宅建業法 法令上の制限 税・その他 |
宅建の試験は、例年10月の第3日曜日、47都道府県の各会場にて、13時からの2時間にわたって行われます。
試験問題は全部で50問(一定の条件を満たすと一部免除となります。)、司法書士試験や行政書士試験のような記述式の問題はなく、全て4肢択一式のマークシート形式となっています。
試験の内容としては、大きく①権利関係、②宅建業法、③法令上の制限、④税・その他の4つの分野に分けられます。詳細は後述します。
宅建の難易度はどれくらい?
宅建士試験は、決して簡単な試験ではありません。
行政書士試験のように絶対的な合格基準点があるわけではなく、実施年によって合格基準点が変わる相対評価の試験です。ここ最近の結果を見ると、全50問中36問前後が合格基準点となっています。
つまり、7割以上の得点が必要な試験なのです。
行政書士試験やFP試験等が6割以上の得点で合格できるのに対し、宅建士試験では7割以上の得点が求められますので、やはり、簡単な試験ではないといえます。また、合格率は15〜17%程度で推移しています。6〜7人に1人が合格する試験といえます。
宅建の合格率推移
ここでは、直近5年間の合格率を見ていきます。直近5年間の合格率の推移は次表のとおりです。
試験実施年 | 申し込み者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格基準点 ()内は5問免除者 |
---|---|---|---|---|---|
令和5年 | 289,096人 | 233,276人 | 40,025人 | 17.2% | 36(31)点 |
令和4年 | 283,856人 | 226,048人 | 38,525人 | 17.0% | 36(31)点 |
令和3年12月 | 39,814人 | 24,965人 | 3,892人 | 15.6% | 34点 |
令和3年10月 | 256,704人 | 209,749人 | 37,579人 | 17.9% | 34(29)点 |
令和2年12月 | 55,121人 | 35,258人 | 4,609人 | 13.1% | 36(31)点 |
令和2年10月 | 204,163人 | 168,989人 | 29,728人 | 17.6% | 38(33)点 |
令和1年 | 276,019人 | 220,797人 | 37,481人 | 17.0% | 35(30)点 |
※令和2(2020)年と令和3(2021)年については、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、2回に分けて試験が実施されました。
上表を見ると分かるように、合格率は15〜17%程度で推移していることから、受験者の中で上位17%に入ることができるかどうかが、合否の分かれ目となります。
宅建合格に必要な勉強時間の目安
一般的に、宅建士試験の合格に必要な勉強時間は300〜500時間と言われています。
勉強期間が半年(180日)だとすると、1日あたり2〜3時間の勉強時間を確保する必要があります。
ただ、これはあくまで初学者が合格するために必要な勉強時間の目安です。不動産業に従事しているかどうか、法律を学習したことがあるかどうか、資格試験に慣れているかどうか等によって、より短い時間での合格は可能です。
不動産関連資格と合格率と目安勉強時間を比較
宅建士と同じ不動産関連資格試験の合格率と、合格ラインに必要な目安勉強時間は次表のとおりです。
資格 | 合格率 | 必要勉強時間(目安) |
---|---|---|
宅建士 | 15~17% | 300~500時間 |
賃貸不動産経営管理士 | 30%前後 | 200~250時間 |
土地家屋調査士 | 10%前後 | 約1,000時間 |
マンション管理士 | 7~9% | 約500時間 |
管理業務主任者 | 20%前後 | 約300時間 |
不動産鑑定士 | 5%前後 | 2,000~4,000時間 |
建築士1級 | 15~20% | 1,000~1,500時間 |
これを見ると、難関資格が多い不動産関連資格の中でも宅建の合格率は低く、必要な勉強時間も少なくありません。
不動産鑑定士や土地家屋調査士、建築士1級は、国家資格の中でも超難関資格に分類されますが、宅建士については、これらに次ぐ難易度の試験であるといえます
宅建の合格率が低い理由
宅建士試験の合格率が低い理由はいくつかあります。以下は宅建の試験合格率が低い主な理由です。
- 受験ハードルが低い(誰でも受験可能)
- 試験範囲が広い
- 受験に前向きでない受験生もいる
1つは、受験ハードルが低く、誰でも受験ができることが挙げられます。また、試験範囲の広さも合格率の低さに影響しているといえます。
その他、特に不動産業に従事する人に言えることですが、会社から受験を勧められて受験を決意したために、勉強に身が入らないまま試験当日を迎える人が一定数いることも合格率の低下に繋がっている原因の一つと考えられます。
上記の「宅建の合格率が低い理由」について、詳しく解説していきます。
受験ハードルが低い(誰でも受験可能)
前述のとおり、宅建士試験には受験資格がありませんので、誰でも受験可能な国家試験です。
以下は令和5年度の宅建試験の職業構成比の円グラフです。
令和5年度試験を受験した人の職業別構成比を示した上図を見ていただくと、不動産業以外の方も多く(約48%)受験していることが分かります。
不動産業に従事していない方にとっては、宅建試験は初めて耳にする専門用語が多いため、理解や暗記をすることは一筋縄ではありません。
不動産業に従事しておらず、宅建士試験が初めての方は、後述する資格予備校の利用も一つの選択肢として検討してみるといいでしょう。
試験範囲が広い
宅建士試験の試験範囲は①権利関係、②宅建業法、③法令上の制限、④税・その他の大きく4つに分けられます。
①の権利関係においては、試験全体の28%を占める合計14問が出題されます。出題範囲は、民法を中心として、区分所有法、不動産登記法、借地借家法などの不動産取引に関連する法令です。
②の宅建業法においては、試験全体の40%を占める合計20問が出題されることから、最重要科目といえます。宅建業免許や営業保証金、重要事項説明、報酬額の制限など、まさに宅建士として業務を行ううえで知っておくべき知識が出題範囲となっています。
③の法令上の制限においては、試験全体の16%にあたる合計8問が出題されます。都市計画法をはじめ建築基準法や国土利用計画法、農地法といった不動産に対して様々な制限を加えるための各種法令が出題範囲となっています。
④の税・その他は、税金科目と免除科目に分けられ、税金科目からは3問、免除科目からは5問がそれぞれ出題されます。税金科目については、不動産取得税や固定資産税、所得税などの不動産に関連する税金が出題範囲となっています。
また、免除科目は、「宅建登録講習」を受講し修了した人が本試験において解答を免除されることからこのように呼ばれていますが、講習を受講できるのは不動産業に従事している人に限られるため、不動産業に従事していない人は免除を受けることができず、5問の解答が必要となります。なお、ここ最近は、免除科目の難易度が上がっているという指摘も見られます。
このように試験範囲が広く、特に、不動産業に従事していない方にとっては、馴染みのない科目が多いことが、合格率の低さに影響していると言っても過言ではありません。
受験に前向きでない受験生もいる
不動産業に従事する人の中には、会社から受験を勧められて受験をする人がいます。
宅建業を営む場合には、5人に1人の割合で専任の宅建士を設置することが求められますので、会社としては、1人でも多くの宅建士を抱えておきたいという思惑があります。
そのため、宅建士試験に合格していない社員に対して受験を勧める(受験させる)というのは、不動産業界ではよくあることなのです。
ただ、仕事をしながら試験勉強をしていく必要がありますので、会社から勧められて受験をする人の中には、乗り気でない人が一定数いることも事実です。
宅建試験の難易度は高く、学生時代の定期テストのように一夜漬けというわけにはいかず、勉強時間を確保できていない場合には、合格することは難しいといえるでしょう。こうした事情から、合格率が低くなっていることも否めません。
宅建合格を目指すためのおすすめ勉強方法
宅建士試験に合格するための学習方法としては、主に以下の三つが挙げられます。
- 独学で勉強する
- 通信学習を利用する
- 予備校に通って勉強する
それぞれのメリット・デメリットがありますので、それらを把握したうえで、どのような人におすすめなのかみていきます。
独学で勉強する
学習方法の1つめは独学です。市販の参考書などを購入し、試験本番に向けて、自分で勉強を進めていくことになります。
独学のメリット①:費用がかからない
通信学習や予備校利用の場合、少なくとも1万円以上、スクールによっては10万円程度の費用がかかります。独学であれば、市販の参考書と問題集、その他補強教材を購入したとしても、7,000〜8,000円程度に抑えることができます。また最近は、YouTubeをはじめとした無料で閲覧できる動画も充実していますので、使わない手はありません。ただ、おすすめ動画として他の動画が表示されることもあり、ついつい関係のない動画を見てしまわないように注意しましょう。
独学のメリット②:好きな時間に勉強ができる
予備校利用の場合は、決まった日時に予備校に通う必要がありますが、独学の場合は、自分の都合に合わせて学習を進めることができます。予定がある日には少しだけ、予定がない日には多めに勉強するといった調整が可能です。
独学のデメリット②:勉強が続かない
独学の場合の最大とも言えるデメリットが、勉強が続かないことです。通信学習や予備校利用の場合と違って、独学の場合は、教えてくれる人がいませんので、難解な専門用語を理解するのは容易ではありません。分からないからやる気が起きない、やる気が起きないから勉強しない、という負のスパイラルに陥ってしまうと、勉強が十分にできないまま試験本番を迎えることになりかねません。
独学のデメリット②:スケジュール管理が大変
また、学習スケジュールも自分で立てなければなりません。試験本番から逆算して、いつまでに、何を、どれくらいするのかを自分で考える必要があります。そして、決めたスケジュールに沿って勉強を続けていかなければなりません。仕事や家事、育児をしながら勉強をする人が多いため、急な予定が入って勉強できない日もあるでしょう。そんな中でも、試験本番まで必要な勉強を続けていくためには、自己管理能力が必要です。費用は抑えられたとしても、合格までの時間がかかってしまったり、受験を諦めてしまったりしないように注意しましょう。
以上を踏まえると、独学は、受験が2回目以上の学習経験者や他の資格試験の受験経験があり、試験までのスケジュール管理ができる人など、自己管理をすることができる人におすすめの学習方法といえます。
通信講座を利用する
学習方法の2つめは通信講座の利用です。誰でもスマホを持つようになった今、合格するためには有効な手段の一つといえます。ネット環境の普及に伴い、対面形式でしか授業をしていなかった資格予備校も、通信学習コースを新たに設けているケースが多いです。
通信講座のメリット①:スキマ時間を有効活用できる
通信講座の場合、基本的には、スマホやPCで講義を視聴することになります。社会人の場合、朝の通勤や仕事中の移動時間・待ち時間など、スキマ時間は案外たくさんあります。スマホで講義を視聴することができるため、参考書を開けなくても勉強をすることができ、スキマ時間を有効活用できれば、かなりの勉強時間を確保することができます。これは、通信講座における最大のメリットといえます。
通信講座のメリット②:プロの講師の授業を受けることができる
通信講座の場合、プロの講師の講義をスマホ等で視聴することができます。初学者であっても、講師が分かりやすく説明をしてくれるので、独学の場合よりも早く深く理解することができます。
・予備校と比較すると、安価に抑えられる
プロの講師の講義を受けることができる点は、予備校利用と共通していますが、通信講座の場合は、費用がより安価になっています。安価で講義を受けながら勉強を進められる点は、大きなメリットといえます。
通信講座のデメリット①:講師に直接質問するのが難しい
通信講座の場合、講師の講義を視聴することはできますが、講義を聴いて疑問が出てきたとしても、その場で質問することはできません。多くは、メール等での問い合わせとなるため、回答までにタイムラグがあり、疑問が解消しないまま先に進むこととなります。
通信講座のデメリット②:自分で授業を聞き進めていかなければならない
通信講座では、あらかじめ講義の数が決まっています。スケジュールに沿って、一つずつ視聴していくのですが、自分で視聴していく必要があります。講義を視聴していなくても、怒られることはありません。相応の料金を支払っているので、独学の場合よりも強制力はありますが、やはり自己管理能力は求められます。
通信講座のデメリット③:ネット環境が必要になる
WEBを利用したオンライン通信講座の場合、スマホやPC等で講義を視聴していくことになりますので、ネット環境が必要となります。
ギガ制限がある場合やネット環境にない場合には、そもそも講義視聴が難しくなってしまいます。
以上を踏まえると、通信講座は、スキマ時間で講義を視聴できるため、初学者で社会人の方や家事・育児中の方におすすめの学習方法といえます。
予備校に通って勉強する
学習方法の3つめは予備校の利用です。予備校に通うというのは、強制力をもって勉強を進めることができますので、合格への最短の道筋といえますが、デメリットもありますので、それぞれ見ておきましょう。
予備校に通うメリット①:強制力をもって勉強することができる
予備校を利用する場合、教室へ通い、生の講師から教わることになります。他の受講生もおり、顔と名前が覚えられてしまうこともあり、「しっかりと通わないと!」という意識が芽生えやすいです。試験本番まで、強制力をもって勉強を続けることができるのは、大きなメリットといえます。
予備校に通うメリット②:分からないことがあれば、その場で講師に質問できる
通信学習の場合と異なり、生の講師が目の前で講義をしてくれますので、講義中に分からないことがあれば、講義後に直接質問することができます。疑問をその都度解消しながら勉強を進めることができますので、勢いに乗って勉強が続きやすくなります。生の講師の存在は、予備校ならではのメリットです。
予備校に通うデメリット①:費用がかかる
大きなメリットがある予備校利用ですが、最大のデメリットは、独学や通信学習と比べて、費用が高いことです。
20万円を超える講座もあり、独学の場合の費用と比較すると10〜20倍、通信学習の場合の費用と比較しても4〜5倍の費用がかかります。社会人でも、気軽に支払える金額ではないでしょう。
予備校に通うデメリット②:時間的・場所的に拘束される
予備校を利用する場合、講義の場所と日時が決められています。仕事をしている方は、講義のために仕事を調整したり、休日に教室に通ったりすることもあるでしょう。移動の時間も考慮すると、時間的・場所的にかなり拘束されることとなります。
以上を踏まえると、予備校利用は、教室に通うための仕事等の調整ができ、費用はかかっても「絶対に合格したい!」という方におすすめの学習方法といえます。
どんな学習方法でも参考書と過去問題集は必須
ここまで、3つの学習方法とそれぞれのメリット・デメリット、どのような人におすすめなのかを見てきましたが、どの学習方法であっても欠かせないものがあります。それは、「参考書(テキスト)」と「過去問題集」です。
「参考書(テキスト)」は、試験範囲を網羅的にまとめたもの、「過去問題集」は、過去の本試験での出題をまとめたものです。通常、通信学習や予備校の場合には、指定のテキストや過去問題集があります。
独学の場合には、市販の参考書や過去問題集は自分で選ぶ必要があります。いずれの場合でも、「参考書(テキスト)」と「過去問題集」をやり込むことは、合格のためには必須といえます。
「参考書(テキスト)」は、フルカラーか白黒か、図表が多いか少ないかといった違いはありますが、試験範囲を網羅しており内容に大きな差はありませんので、自分が“分かりやすく感じるもの”を選ぶようにしてください。
「過去問題集」については、試験実施年ごとにまとめた年度別のものや各科目の分野ごとにまとめた分野別のものがありますが、おすすめは「分野別過去問題集」です。
前述のとおり、試験範囲は大きく4つの科目に別れており、各科目の中でさらに多くの分野に分かれています。各科目の各分野を理解、記憶していくためには「分野別過去問題集」がおすすめです。「分野別過去問題集」で間違えた論点や理解が曖昧だと感じた論点については、その周辺知識も含めて、必ず「参考書(テキスト)」に戻って、正しい知識を確認します。
地道ですが、基本的には「分野別過去問題集」と「参考書(テキスト)」との繰り返しにより、各分野の知識を定着させるのが合格への近道です。
宅建資格取得のメリット
最後に、宅建士資格を取得することのメリットとデメリットを見ておきます。
試験に合格するためには、多くの時間を費やして勉強に取り組むことになりますので、メリットとデメリットをそれぞれ把握し、“自分は何のために宅建士資格を取得するのか”を明確にしてから学習をスタートさせるようにしましょう。
不動産業界への転職に役立つ
宅建士資格を取得することの最大のメリットは、不動産業界への転職にあたって大きな武器になることです。前
前述のとおり、宅建業を営む場合には、5人に1人の割合で宅建士を置かなければなりません。従業員数が多ければ、それだけ必要になる宅建士の数も多くなります。しかし、宅建士試験の合格率は17%程度ですから、誰でも宅建士になれるわけではありません。そのため、宅建士資格を持っていることを条件とした求人はたくさん出ています。
また、宅建士の求人については「資格手当」が支給されることが多いです。「資格手当」の相場は1〜3万円/月となっており、資格取得の頑張りが報われるのは、宅建士資格の魅力といえます。
独占業務があるので安定して働ける
また、前述した独占業務があることも、宅建士資格のメリットの一つです。
ファイナンシャル・プランニング技能士(FP)や中小企業診断士は、宅建士と同じ国家資格であり、士業に属する資格ですが、宅建資格と違って独占業務がありません。つまり、資格を持っていても持っていなくても、できる業務の範囲は同じだということです。
それに対して、宅建士には3つの独占業務があるので、需要がゼロになる可能性は限りなく低いといえるでしょう。独占業務の存在は、宅建士資格取得の大きなメリットです。
宅建資格取得のデメリット
これまで見てきたメリットに対して、デメリットにはどのようなものがあるでしょうか。難関資格を取得することのデメリットと言われると、あまり思い付かないかもしれませんが、いくつか挙げられますので、一つずつ見ておきます。
不動産業界以外の汎用性は低い
宅建士資格は、基本的に不動産業界でしかその効果を発揮しません。
3つの独占業務も、不動産業界(中でも不動産の売買や賃貸)における業務であり、他業界でそれらの業務を行うことはほとんどないでしょう。士業の一つのため専門性は高いですが、その反面、汎用性が低い点はデメリットといえます。
受験を決めるにあたっては、資格を活かして何がしたいのかを考えてみるのがよいでしょう。
5年に1回更新が必要
宅建士試験に合格し、宅建士としての登録を経て「宅建士証」の交付を受けた場合、その宅建士証に記載された有効期限を一つの区切りとして、5年に1回の頻度で更新の手続きをしなければなりません。
これは、運転免許証の更新手続きのようなもので、更新手続きをしないまま宅建士として業務を行うと、法律違反となってしまいます。
更新を行う場合には、法定講習と呼ばれる講習を受講しなければなりません。この法定講習を受講するには、1万円程度の受講料が必要となります。また、新しい宅建士証の交付手数料として、5,000円程度の費用がかかります。
宅建士であり続けるためには、5年に1度、2万円弱の費用がかかるのが特徴であり、人によってはデメリットに感じる方もいるのではないでしょうか。
しかし、宅建士として専門性をもって仕事をしていく場合には、知識のアップデートは欠かせませんので、必要経費と考えるのが妥当といえます。
宅建の難易度・合格率まとめ
この記事では、宅建士試験の難易度や合格率を中心に、試験の概要、おすすめの学習方法、資格取得後のメリット・デメリットなどを見てきました。
宅建士は難関資格のため、合格までの道のりは平坦ではありません。だからこそ、合格を勝ち取ったときの喜びはひとしおです。また、合格以外にも手に入るものがあります。
試験勉強を通して、勉強習慣を身に付けることができれば、今後の人生においての大きな武器となります。宅建士以外の資格試験を志してもよいでしょうし、ご自身の興味のあることを学んでみてもよいでしょう。
宅建士試験の受験を検討されている方は、学習方法を検討した上で、是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。既に試験勉強を始めている方は、スケジュール管理を行い、参考書(テキスト)と過去問題集を繰り返しながら、着実に合格への道を進んでいただければと思います。
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