ニュースや新聞でたびたび登場するリスキリングという言葉ですが、意味や定義がハッキリと分かってないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、そろそろ知らないと恥ずかしくなってきた「リスキリング」について、基礎知識から具体的な方法、事例、導入方法まで徹底解説していきますので、ぜひご一読ください。
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リスキリング(re-skilling)とは?
リスキリング(re-skilling)とは、これから新たに発生すると見込まれる業務に必要な、スキルやノウハウの習得を目的に、従業員に研修参加や勉強をしてもらう取り組みのことを指します。
今やインターネット、ITツールの利用は一般的になり、最近ではChatGPTを始めとするAIや商品製造や事務作業を自動化するロボットを活用する企業が増えてきています。
ホワイトカラー、ブルーカラー問わず、これまで人が行ってきた業務がAIやロボットに代替されつつあります。結果的に、その業務に携わっていた人々は、仕事を失ってしまうリスクにさらされているのです。
以下のような職業・業務は今後AIやロボットに代替されるとされています。
AIやロボットに代替されるといわれる職業
- 事務員
- 駅員
- 工場や建設現場の作業員
- データ入力
- レジ打ち
一方でAIやロボットが広がることにより、新たに以下のような業務も生まれてくるでしょう。
AIやロボットにより新たに生まれる仕事
- AI・ロボットの管理をするエンジニア
- プロンプトエンジニア
- 社内のITツールやシステムを管理する業務
- データを活用したマーケティング業務
上記のような今後新たに生まれる業務や職業で必要となってくるスキル・知識を、今のうちから従業員に身に着けてもらう機会を提供するのが「リスキリング」なのです。
リスキリングとリカレント教育の違いは?
リスキリングとよく混同されがちな言葉に、「リカレント教育」があります。2つの言葉の違いは、「今の職場で実施されるかどうか」です。
リカレント教育は、スキル・知識を習得するという点ではリスキリングと同じですが、一度職場をやめて専門学校や大学などに通って学ぶという点で、リスキリングとは異なります。
企業からみると、リカレントよりリスキリングの方が従業員が仕事を続けつつスキルアップを促せる、というメリットがあります。
社会全体で「学び直し」「スキル習得」「キャリア形成」といった、動きが広がりを見せているのと並行して、人材不足も加速しています。
企業はリスキリングを従業員に提供することにより、人材の離脱を防止しつつ、従業員のスキルアップや将来仕事を失うリスクを軽減できるのです。
リスキリングの必要性が高まっている背景とは?
リスキリングの必要性が高まっている背景には、前述の人材不足の他に、以下のような社会的背景があります。
リスキリングに必要性が高まっている背景
- ChatGPTなどのAI技術の発達・実用化
- 社会全体でDX推進が一般化
- 新型コロナウイルスの影響で働き方に変化
- 政府も補助金・助成金事業を実施している
- リスキリングに関する宣言が国際機関でなされた
ChatGPTなどのAI技術の発達・実用化
前述の通り、話題となっているChatGPTを始めとするAI技術の発達・実用化が、リスキリングの動きを加速させています。
AGIやASIという言葉をご存じでしょうか。
AGIとは、Artificial General Intelligence(人工汎用知能)の略語で、人間と同じように複数のタスクがこなすことができる「汎用的知能」を持ったAIのことを指します。AGI自身で学習し成長していくこともできます。
簡単にいうと、ほぼ人間と同等の能力を持ったAIのことです。
ソフトバンクグループの孫正義氏によると、「AGIは2023年現在から10年以内実現する」と予測されているそうです。
ASIとは、 Artificial Superintelligence(人工超知能)の略で、前述のAGIのさらに10,000倍の知能をもつAIのことを指します。2060年には実現すると言われています。
このように、知能面で人間を大きく超えるAIの登場により、人類の多くの仕事が代替されると予測されています。仕事を失う前に、今後新たに生まれてくる仕事に就けるようなスキルを見につけることが、必要とされる中、注目を浴びているのがリスキリングなのです。
参照:日経クロステック「SBG孫氏「あらゆる分野で優れたAGIが10年以内に実現する」、AI規制には賛同」
社会全体でDX推進が一般化
社会全体でDX推進が一般化されつつあることも、リスキリングを推し進めている背景となっています。
今やITツールを業務に利用していない企業はほとんどありません。今後も引き続き、業務の様々な部分でDX化が進んでいきます。
しかしDXが急速に進むことにより、便利にはなったものの、活用するITツールや社内システム全体を管理できる人材はますます不足しています。
システムの管理や新たなシステムの開発・設計・導入ができる人材を増やさなければならないという点からも、リスキリングが注目されているのです。
新型コロナウイルスの影響で働き方に変化
新型コロナウイルスの影響で、テレワークが一般化されたこともリスキリングの注目度を高める要因となっています。
テレワークが一般化したことで、多くの企業が、従業員同士が離れたところにいながらでも、プロジェクトを効率的に進める方法を身に着けはじめています。
その動きがさらに加速すると、固定費に加えて教育・採用コストが発生する「従業員」よりも、外部の高い専門スキルを持った人材とともに、プロジェクトを進めた方が、効率的な経営につながると考える企業も増えてくるでしょう。
そうすると既存の従業員でスキルを持っていない人材は、仕事がなくなってしまい、経営を圧迫するだけの存在となってしまいます。そこで既存従業員をいわゆる”無駄なコスト”にしないためにも、スキルを身に着けさせるという意味でリスキリングが注目されています。
政府も補助金・助成金事業を実施している
政府が補助金・助成金事業を展開し、積極的にリスキリングを推進している点も注目を集める背景となっています。
以下のような関連補助金・助成金が挙げられます。
- 人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」(厚生労働省)
- DXリスキリング助成金(公益財団法人東京しごと財団)
今なら、リスキリング導入のコストを抑えられることから、多くの企業が取り入れるべきか検討をはじめているのです。
リスキリングに関する宣言が国際機関でなされた
国際機関によって、リスキリングに関する宣言がなされている点も、注目を集める背景となっています。
例えば、2020年開催のダボス会議(世界経済会議)では、以下のような発表がなされています。
2030年までに地球人口のうち10億人をリスキリングする
引用:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流」
その他国内では、経団連が発表した「2020年11月の新成長戦略」の中でも、リスキリングについて触れられていました。
現在の経済社会の中で、国際機関・日本政府・企業団体がそろってリスキリングの必要性を唱えています。
リスキリングの具体的な方法は?
ここでは、リスキリングの具体的な方法について解説していきます。
リスキリングのジャンルや内容に定義はありませんが、多くの企業では以下のようなリスキリングが行われています。
代表的なリスキリング
- AI活用に関する教育を社員にする
- 社員にプログラミングスキル研修を受けてもらう
- デジタルマーケティングの講習会やeラーニング講座を社員に受講してもらう
- セキュリティ対策に関する研修を社員に行う
>リスキリングにもオススメの「キャリアコンサルタント国家資格」の解説はこちら
AI活用に関する教育を社員にする
生成AIが大きな話題となっていることからも感じられるように、今後しばらくの間、ビジネスの台風の目となる「AI」。その教育を社員に行うこともまた、様々な企業で取り入れられているリスキリング方法の一つです。
AIに関する基礎的な知識から、プログラミングスキルや機械学習、ビッグデータといった応用的な知識・スキルを、社員に身に着けさせることで、社内業務へのAI活用やAI関連の新ビジネスアイデアの起案につながることでしょう。
また、生成AIなど身近に活用できるAIサービスが増えてきているため、積極的に業務に取り入れることも重要です。
社員にプログラミングのスキル研修を受けてもらう
社内のDX化が進む中で、社員にプログラミングスキルの研修を受けてもらう企業も増えています。
特に、インフラ側のエンジニアは不足しており、採用難と言われています。AWSやGCPを始めとする、クラウドサービスの知識を持ったエンジニアをリスキリングで社内育成できれば大幅なコスト削減が実現可能です。
また、インフラエンジニアといった高度IT人材のみならず、社内人材に対しても、ITやweb、ネットワークの基礎的な知識を習得させる取り組みが行われています。
デジタルマーケティングの講習会やeラーニング講座を社員に受講してもらう
webを使ったデジタルマーケティング人材の育成も、リスキリングの取り組みで良く行われています。
従来型のマーケティングノウハウしか持たない企業が、運用型広告やSEOといったデジタルマーケティング関連のスキルを身に着けることで、これまで獲得できなかった顧客の新規開拓や売上アップにつながります。
また、マーケティングで取り扱うビッグデータを分析する方法など、今後トレンドとなってくるスキルの教育もリスキリングの一環で行われています。
セキュリティ対策に関する研修を社員に行う
リスキリングで、サイバーセキュリティ対策に関する研修を社員に行う企業も多いです。
セキュリティエンジニアの育成といった高いレベルのリスキリングに加えて、社内全体のサイバーセキュリティ強化のための初心者向け研修等に取り組む企業もあります。
一時期話題となったエモテットウイルスのように、マルウェアも年々高度化してきています。サイバーセキュリティに関する知識を従業員一人一人が身に着ける重要性はますます高まっています。
リスキリングを社内推進するメリットとは?
ここでは、リスキリングを推進するメリットを紹介していきます。
リスキリングには、以下のようなメリットがあります。
リスキリングを推進するメリット
- スキルを持った人材の獲得コスト削減
- IT人材不足の解消
- 社員スキルアップによる業務効率化・経営改善
- 従業員の定着率アップにもつながる
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スキルを持った人材の獲得コスト削減
企業がリスキリングを推進するメリット一つ目は、スキル人材の獲得コスト削減につながることです。
専門的なスキルを持った人材は、採用費が高く、経営を圧迫しがちです。かといってプログラマーやデータアナリスト、マーケターなど、高いスキルを持っている人材がいれば、売上アップ・業務効率化に大きく貢献してもらえるでしょう。
リスキリングを取り入れ、そういった人材を社内で育て上げることで、多額の採用費をかける必要がなくなるのは大きなメリットといえます。
加えて、社内人材がスキルを身に着けると、社内の事情や文化を知っているスキル人材となります。社内の人材であれば、社内文化に沿った提案や会社の課題・目標に即したアイデア出しができるので、外部人材以上に貢献してもらえる可能性も高いでしょう。
IT人材不足の解消
企業がリスキリングを推進するメリット二つ目は、IT人材不足の解消につながる点です。
昨今、企業では以下のようなIT人材が特に不足しているとされています。
- セキュリティエンジニア
-
サイバー攻撃対策のために、社内システムやネットワークの管理、保守、設計、運用、開発、企画まで行うエンジニア人材。
- クラウドエンジニア
-
AWSやGCP、Microsoft Azureなど、クラウドサービス(クラウドサーバー)の設計、構築、保守を行う人材のこと
どちらも、一定規模を超えた企業には欠かせない存在だと言えますが、人材が不足していることから、採用費や給与が高騰しています。例えば、AWSの知識があるクラウドエンジニアは研修を終えた新人レベルの人材で、年収が900万円を超えるケースもあります。
リスキリングを進め、社内で上記のような人材を確保することができたら、大きなメリットを得られます。
社員スキルアップによる業務効率化・経営改善
企業がリスキリングを推進するメリット三つ目は、業務効率化や経営数値の改善につながることです。
例えば、リスキリングで習得した知識を、現在の業務フローのDX化につなげられれば、社内全体で業務効率化につながってくるでしょう。そういった社内アイデアの源泉となる可能性も秘めているのがリスキリングの大きなメリットなのです。
その他、デジタルマーケティング人材を育て上げることができれば、これまで運用していたweb広告やSEO対策などをインハウス化することもできるでしょう。外注コスト削減につながるだけでなく、売上アップにもつながっていきます。
従業員の定着率アップにもつながる
企業がリスキリングを推進するメリット四つ目は、従業員の定着率アップにつながることです。
AIやロボットの台頭で、スキルを身に着けてキャリアを安定させたいというニーズが高まっています。リスキリングを通して、これからの時代に必要なスキル・知識を学べる会社であれば従業員としても、長く続けたいと考えるでしょう。
実際、AT&Tというアメリカの大手企業では、リスキリングを取り入れたことで、従業員の退職率低下を実現しています。
リスキリングを導入する流れ
リスキリングを導入する主な流れは以下の通りです。
リスキリング導入の流れ
- 自社の事業や課題を振り返り何のスキルを習得するか策定する
- リスキリングを実施する対象者・部署を決める
- リスキリング実施のスケジュールを決める
- リスキリングに使う教材(コンテンツ)を決める
- 取り組み開始!
- リスキリングを通して身に着けたスキルを業務に活かす
①自社の事業や課題を振り返り何のスキルを習得するか策定する
まずは、自社事業の内容や現在抱えている課題、今後の目標・ビジョンの振り返りを行いましょう。以下のような視点から考えるとよいでしょう。
- 現在自社が抱えている経営課題は何か
- 目標やビジョン
- 目標達成や課題解決のために必要なことは?
そのうえで、自社の従業員が習得すべきスキルは何か、検討し策定しましょう。
企業の特徴毎に適切な内容は変わってきますので、闇雲にスキルを習得すれば良いというわけではないのです。
上記に加えて、以下のような視点から従業員のスキルの棚卸・整理を行いましょう。
- 現在の従業員のスキル
- スキルのレベル
スキルの現状分析・可視化を行うことで、何をどれだけやればいいのか明確になってきます。
②リスキリングを実施する対象者・部署を決める
続いて、リスキリングを実施する対象となる部署や従業員を決めましょう。
リスキリングは社内全体で行うというより、ある程度事業課題に沿って対象者を絞って行うケースも多いです。以下のような基準で選定を行うとよいでしょう。
- 新規事業のPM候補として考えている従業員
- インフラエンジニアで今後クラウドエンジニアとしても活躍してほしい従業員
- サイバーセキュリティ対策を担当してほしい従業員・部署 キャリア形成に意欲的な従業員 会社として投資を強化したい事業部の従業員
①の工程で導き出した不足スキルと対象となる部署・従業員を掛け合わせて、リスキリングで学習するスキルの内容や専門性を決めていくとよいでしょう。
③リスキリング実施のスケジュールを決める
リスキリングで身に着けさせるべきスキルを策定したら、続いて実施スケジュールを決めましょう。
導入するまでのスケジュールや、導入後に従業員が効率よく学習できるようなプログラムを組み立てます。ここから外部のサービスやコンサルタントを利用するのも選択肢です。
④リスキリングに使う教材(コンテンツ)を決める
スケジュールやプログラムの策定と並行して、リスキリングに使う教材(コンテンツ)を決めましょう。
社内で教材を作成する方法と、外部のサービスを利用する方法があります。
外部のサービスや教材としては、以下のような例が挙げられます。
- クラウドサービス習得支援サービス(AWS、GCP、Azureなど)
- G検定・データサイエンティスト検定対策支援サービス
- ITパスポート試験と関連教材
- E資格・基本情報技術者試験と関連教材
- 応用情報技術者試験と関連教材
- Python3
上記に挙げt物はあくまで一例ですので、自社の従業員や事業の課題に合わせて、取得すべきスキルを定義していきましょう。
⑤取り組み開始!
活用するコンテンツを決めたら、リスキリング取り組みを開始します。
取り組み方法としては、決まった時間に従業員にとりかかってもらうか、時間を選んでもらうパターンがあります。
就業時間外に行うと従業員に不満がたまるため、就業時間内で行うようにするのがベターでしょう。
⑥リスキリングを通して身に着けたスキルを業務に活かす
リスキリングは取り組んで終わりではなく、習得したスキルを業務に活かして初めて成果が出たと言えます。
スキルを業務に最大限活かすためには、最初の設計段階がカギを握ります。
現状の課題や目標から逆算して、必要なスキルや対象となる従業員の選定が適切に行われていれば、成果を実感できる可能性は高いでしょう。
リスキリング導入前に知っておきたい注意点
ここでは、リスキリングを導入する前に知っておきたい注意点について紹介していきます。
導入を推進する際は、以下のような点に注意しましょう。
リスキリング導入の注意点
- リスキリングの有用性を社内に理解してもらう
- 自社に合ったリスキリングのコンテンツを選択する
- 従業員のモチベーションが保たれる仕組みの構築
リスキリングの注意点について以下に詳しく解説していきます。
リスキリングの有用性を社内に理解してもらう
リスキリングという言葉は、まだ社会であまり浸透しておらず、意味を理解していない従業員も多くいます。
したがって、突然リスキリングをやることを従業員に宣言しても、理解や賛同を得ることは難しいと言えます。社歴の長い社員などから、反発の声が上がってくる場合もあるでしょう。
導入する前には社内全体に対して、リスキリングの目的や導入することで得られるメリットを丁寧に説明し、理解してもらう必要があります。
当事者意識を持ってもらうことで、リスキリングに対するモチベーションも高まり、効果最大化にもつながってくるでしょう。
自社に合ったリスキリングのコンテンツを選択する
リスキリングのコンテンツ選択は自社に合ったものを選ぶことが大切です。
前述の通り、自社が達成したい目標やビジョン、解決したい課題を洗い出し整理したうえで、逆算しながらコンテンツ選びをする必要があります。
コンテンツにも様々な種類があり、外部の教材を利用するタイプや研修に参加するタイプ、eラーニング、自社で開発する方法もあります。
企業の特徴によって選択すべきコンテンツは異なるため、より自社にマッチしたものを選ぶのが成功のポイントと言えます。
従業員のモチベーションが保たれる仕組みの構築
リスキリング導入にあたり、従業員のモチベーションが保たれるようなプログラム設計は重要です。
例えば、負担が多すぎて業務時間を圧迫する、習得するスキルが現在のレベルから乖離しすぎているといったことがあると従業員からの負担につながります。
現場の従業員の声も聞きながら、現状のスキルレベルに合わせた内容を構築しましょう。
また、徐々に課題を解決し成功体験を積み重ねられるようなプログラムにすると尚よいでしょう。
実際の企業のリスキリング事例を紹介
ここでは、実際の企業が行っているリスキリング事例を紹介していきます。
リスキリングを行っている代表的な事例として、以下の企業の事例を紹介します。
リスキリング導入事例
- AT&T
- 富士通
- Amazon
- 味の素
AT&T
AT&Tは、アメリカにある大手企業です。通信業界の会社です。
世界の中でも、特に早い段階からリスキリングをはじめた企業だと言われており、よく事例としても紹介されています。
AT&Tがリスキリングを意識しはじめたのは2008年です。当時、通信業界では技術革命が起こっている中、新技術に対応可能なスキルを持った従業員が社内にどれくらいいるのか調査を行ったのがきっかけです。
調査結果は驚くことに、社内の半数の従業員が今後必要なくなるスキルしか、持ち合わせておらず、これからの急速な通信業界の変化に対応できないことが判明しました。
そこで、2013年に自社の従業員のうち、10万人を対象としたリスキリングを開始しました。
リスキリングには10億ドルと多額を投じていますが、結果は良好でした。リスキリングを行った従業員が、行っていない従業員にくらべて昇進率が上がるという成果を実現しています。加えて、従業員の定着率も高まったことから、リスキリングの成功モデルとして広く世界に認知される事例となっています。
参照:リクルートワークス研究所「第4回 リスキリングの先駆者は何に取り組んだのか」
富士通
国内大手企業の富士通もリスキリングに取り組んでいます。
富士通のリスキリングは、2019年の社長交代のタイミングで新たに提言された「IT企業からDX企業へ」という社内メッセージの実現を目的に実行されています。
富士通で行われたリスキリングの特徴としては、モチベーションを高めるマインドセットまで含めて、プログラムが設計されている点です。
グループワークなどを通じて、従業員一人一人に、「富士通の中でのパーパス(存在価値・存在意義)」を考えさせることを土台に、自身のキャリアのビジョンを明確化させています。そのうえで現状から不足しているスキルを認識させることで、モチベーション高くリスキリングに取り組めるマインドセットの構築に成功しているのです。
強固なマインドセットを構築したうえで、富士通はリスキリングで使うコンテンツを自社開発しています。
「Fujitsu Learning Experience(FLX)」と称するプラットフォーム型のコンテンツで、誰もが、オンデマンド型教育をいつでもどこでも受けられるという特長があります。富士通ならではのリスキリング施策といえるでしょう。
参照:NIKKEIリスキリング「手挙げ方式のポスティングでワクワク 富士通の「ジョブ型×リスキリング」」
Amazon
Amazonのリスキリング事例は非常に特徴的です。
それは、あえて会社側からスキルアップのコンテンツを提供しないという点にあります。
そもそもAmazonは中途入社の人材が中心ですが、誰もが始めから「高いスキル習得意識」を持っており、会社側からコンテンツを提供せずとも自己学習を行う従業員がほとんどです。
そのため、会社としてできることは、従業員の学びの時間を邪魔しないことだと判断し、スキル習得のための授業や試験参加であれば、申告すれば仕事を休む、早退を認めるというような制度を導入しています。
この事例からみても、企業や所属する従業員の特性毎に、適切なリスキリングの取り組み方は大きく異なってくることがわかります。
参照:日経ビジネス「アマゾンジャパン前社長が語る、「リスキリング失敗」の理由」
味の素
味の素では、全従業員を対象にリスキリングを行っています。
2020年の中期経営計画においてDXを重要なポイントだとしたうえで、2030年までに全従業員をDXビジネス人材へと育成する計画を立てています。
ビジネスDX人財育成コースというコンテンツを活用しています。eラーニングや外部での認定取得、自習の三つが、セットとなっており、初級・中級・上級とコース分けしたうえで、スキル習得を進めます。
参照:ALMACREATION「国内企業のリスキリング成功事例5つとそれぞれの注目ポイントを解説」
リスキリングに関するよくある質問
ここでは、リスキリングに関するよくある質問に対して、Q&A形式でお答えしていきます。以下のような質問に対する回答をご用意しています。
- 日本リスキリングコンソーシアムとは何ですか?
- リスキリング導入に使える補助金がありますか?
日本リスキリングコンソーシアムとは何ですか?
日本リスキングコンソーシアムとは、官民が一体となって、国民全体のリスキリングに取り組む試みです。国、民間企業が協力し、性別や年齢問わず全日本国民のスキルアップを狙います。
リスキリング導入に使える補助金がありますか?
リスキリング導入に使える補助金・助成金は下記の通りです。
自社が対象条件を満たすか等、詳細は上記のリンクよりご確認ください。
リスキリングについてまとめ
この記事では、リスキングについて基礎知識から実際の事例、導入方法まで網羅的に解説してきました。
リスキリングは社会的背景からも、今後ますます必要性が高まっていくことが想定されます。自社での導入を検討する際は、自社の特徴に合った取り組みをすることが大切です。
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