衛生管理者の難易度は低い?第一種・第二種の合格率や資格取得のメリットを解説

衛生管理者の難易度と合格率を解説
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従業員規模が常時50名以上の企業は、労働環境の整備に携わる衛生管理者を配置しなければなりません。衛生管理者は、国家資格である衛生管理者免許の保有者が名乗ることが出来ますが、「国家資格は難しそう」「合格出来るか分からない」と不安に思う人も多いのではないでしょうか。

本記事では、衛生管理者の難易度と合格率について解説します。衛生管理者の試験概要やメリット、注意点なども説明するので、資格取得を検討している人は是非ご確認ください。

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目次

衛生管理者とは?

衛生管理者は、職場の労働者における健康障害の防止を目的とした事業場専属の管理者です。事業場の労働環境を衛生的に改善する立場になるでしょう。労働環境の衛生とは、労働者の健康維持を目的にしています。

労働環境は、設備環境だけではなく人間関係の快適性も含まれます。

労働安全衛生法第71条の2では、快適な職場づくりが事業者の努力義務と示されている状況です。事業者は、法の観点からも労働環境の衛生を考慮する必要があるでしょう。

参照:厚生労働省「職場のあんぜんサイト|安全衛生キーワード」

衛生管理者は国家資格

衛生管理者の資格は労働安全衛生法で定められた国家資格です。

特定の条件に当てはまる事業所では、衛生管理者の設置が法律上必須となっています。たとえば、職場の従業員が常時50名以上いる事業者は、その事業に専属する衛生管理者を配置しなければなりません。

衛生管理者は、職場の従業員数によって選任する人数が労働安全衛生法で定められています。

衛生管理者の必要選任数
  • 50人以上~200人以下:衛生管理者1名以上
  • 200人以上~500人以下:衛生管理者2名以上
  • 500人以上~1,000人以下:衛生管理者3名以上
  • 1,000人以上~2,000人以下:衛生管理者4名以上
  • 2,000人以上~3,000人以下:衛生管理者5名以上
  • 3,000人以上:衛生管理者6名以上

※参照:厚生労働省「衛生管理者について教えて下さい。」

また、事業場では業種に応じた資格を保有する衛生管理者が必要になります。

危険な業務などが考えられる業種は、法定有害業務に指定されています。次の特定業務が労働基準法施行規則第18条で定められている法定有害業務です。

労働基準法施行規則第18条で定める特定業務具体的な業務内容
多量の高熱物体の取り扱いや著しく暑熱な場所での業務鉄工所や火気を取り扱う工場や高温な作業場所など
多量の低温物体の取扱いや寒冷な場所での業務冷蔵冷凍倉庫作業製氷業冷凍食品製造業の倉庫内部業務
(冷蔵庫、著瓢湖、冷凍庫など)
ラジウム放射線やエックス線などの有害放射線を浴びる可能性がある業務放射性物質の取扱業務
土石や獣毛の粉末やほこりなどが飛散する場所での業務植物性や動物性、鉱物性の粉じんの中で作業する業務
異常気圧のもとで実施する業務圧気工法による大気圧を超えた圧力下の作業ヘルメットやマスク式の潜水器などを使う業務
削岩機や鋲打機などの使用で体に振動を与える業務身体への衝撃が大きい業務
重量物を重点的に激しく使う業務労働時間の多くを重量物の運搬に使う業務
ボイラー製造などで強烈な騒音を発する環境での業務100デシベル以上の騒音下で行うボイラー業務
有害物の粉じんや蒸気、ガスが発生する場所での業務水銀ヒ素黄リンフッ化水素酸塩酸硝酸硫酸青酸苛性アルカリ石炭酸鉛クロム亜硫酸一酸化炭素二硫化炭素ベンゼンアニリン など
労働基準法施行規則第18条で定める特定業務一覧

法定の有害業務の中でも一定の有害業務の事業場では、衛生管理者のうち誰か一人が衛生工学衛生管理免許を保有していなければなりません。

※参照:厚生労働省「衛生管理者について教えて下さい。」

衛生管理者の仕事内容

衛生管理者の仕事内容は、職場の作業環境における衛生管理です。また、作業環境だけではなく、労働者の健康管理も担います。衛生管理者は、職場や労働者の定期的な視察を実施します。そのうえで、問題や改善点があれば処置対応する役目となるでしょう。

企業では、職場の労働環境を整えるために、労働安全衛生法第18条により衛生委員会の設置が義務付けられています。

衛生委員会は、雇用主である事業者側と従事する労働者側の協働により運営する組織です。職場環境が原因で労働者が病気やケガをしないように取り組みます。衛生委員会を取り仕切る衛生管理者は、一般的に専任ではなく別の業務と掛け持ちの場合が考えられます。

参照:厚生労働省「職場のあんぜんサイト|安全衛生キーワード」

第一種と第二種衛生管理者の違い

衛生管理者には第一種と第二種があり、それぞれ「対応可能な業種」が異なります。

第一種衛生管理者第二種衛生管理者
対応可能な業種全ての業種で対応可能以下の業種以外で対応可能
(農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工業を含む)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業及び清掃業)
第一種と第二種衛生管理者の対応可能業種

第一種衛生管理者は、農林水産業や製造業、運送業などすべての業種で対応可能であるのに対し、第二種衛生管理者は一部の業種のみ選任されることが可能な資格となっています。

※参照:公益財団法人 安全衛生技術試験協会「衛生管理者(第一種及び第二種)」

※参照:厚生労働省「労働基準|よくある質問」

衛生管理者の難易度と合格率

衛生管理者資格取得の難易度と合格率は、次のデータ結果となっています。

第一種衛生管理者第二種衛生管理者
難易度低い低い
受験者数68,066人35,199人
合格者数31,207人18,089人
合格率45.8%51.4%
※参照:公益財団法人 安全衛生技術試験協会「労働安全衛生法・作業環境測定法に基づく試験」

衛生管理者の資格取得における難易度は、同じく労働関連分野の国家資格である社会保険労務士試験と比較した場合、難しくない試験だといえます。

社会保険労務士試験の場合は、第55回試験の受験者数42,741人中、合格者数が2,720人となっており、合格率は、全体の6.4%(令和5年8月27日実施の試験結果)となっています。

※参照:厚生労働省「第55回社会保険労務士試験の合格者発表」

建築物環境衛生管理技術者試験の場合は、受験者数8,232人中、合格者数1,804人です。合格率は、21.9%(令和5年11月1日実施の試験結果)となっています。

公益財団法人 日本建築衛生管理教育センター「第53回建築物環境衛生管理技術者試験の合格発表」

衛生管理者の合格率は、社会保険労務士の合格率6.4%や建築物環境衛生管理技術者の合格率21.9%に比べると、第一種や第二種どちらも45.8%〜51.4%と高い傾向です。また、年に1回しか受験の機会が無い上記の国家資格と比較すると、1年に何度も試験に挑戦できる衛生管理者はその分合格を目指しやすいといえます。

そのため、衛生管理者は国家資格の中でも難易度は低い部類に入ると考えられます。

衛生管理者の試験難易度が低い

衛生管理者の試験難易度は、高くありません。その理由は、次のとおりです。

衛生管理者の試験難易度が低い理由①:試験合格率が高い

先述したが衛生管理者の試験合格率は、令和4年度の統計では45.8%〜51.4%となっています。

受験者の半数近くが合格しているため、比較的合格率の高い試験と考えられるでしょう。試験合格の難易度は低く、受験者2人にひとりは合格するイメージです。

衛生管理者の試験難易度が低い理由②:受験の機会が多い

衛生管理者の試験は、受験機会の多さが特徴となっています。試験の機会は、全国7カ所で毎月2〜4回ほど実施されています。そのため、受験者は不合格になっても期間を空けずに再挑戦しやすい資格とも考えられるでしょう。

衛生管理者の配置を義務付けられた企業にとっては、衛生管理者の存在は法律上欠かせません。そのため、合格率の高さや受験機会の多さなどは、企業運営を停滞させない配慮とも考えられます。

衛生管理者の試験概要

衛生管理者の試験は、次の内容で実施されます。

第一種衛生管理者第二種衛生管理者
試験日程毎月2回~6回開催(全国7会場ごとに異なる)
出題形式5つの選択肢から正解を選ぶマークシート形式
受験料8,800円
試験会場北海道安全衛生技術センター
東北安全衛生技術センター
関東安全衛生技術センター
中部安全衛生技術センター
近畿安全衛生技術センター
中国四国安全衛生技術センター
九州安全衛生技術センター
試験実施団体公益財団法人 安全衛生技術試験協会
※参照:公益財団法人 安全衛生技術試験協会

衛生管理者の試験は各地域の安全衛生技術センターで実施されており、年に何度も挑戦する機会がある点が特徴といえます。

公益財団法人 安全衛生技術試験協会「試験の日程」

公益財団法人 安全衛生技術試験協会「本部、各センターのご案内」

衛生管理者の受験資格

衛生管理者の受験資格は、次の条件となっています。

必要な労働衛生の実務経験衛生管理者の受験資格
受験資格取得後から実務経験1年以上大学卒業(短大含む)または高等専門学校卒業
大学より学士の学位授与または専門職大学の前期課程修了
省庁大学(防衛大学や海上保安大学など)卒業
大学入学の資格がある専修学校の専門課程修了
指定の専修学校専門課程(4年以上)を一定期間に修了
船員法における衛生管理適任証書を交付
専門課程または特定専門課程の高度職業訓練を修了
応用課程の高度職業訓練を修了
外国において学校教育の14年以上の課程を修了
朝鮮大学の4年制学科を140単位以上取得して卒業
受験資格取得後から実務経験3年以上高等学校や中等教育学校(中高一貫教育)卒業者
高等学校卒業程度認定試験合格
外国において学校教育の12年課程修了
普通課程の普通職業訓練を修了
特別支援学校の高等部卒業
受験資格取得後から実務経験4年以上旧専修訓練課程の普通職業訓練を修了
※参照:公益財団法人 安全衛生技術試験協会「受験資格」

それぞれの受験資格は、卒業や修了後から事業場の労働衛生実務に1年〜4年ほど携わっている必要があります。卒業した教育機関によって実務経験が異なる点が特徴です。

実務経験が必須であることとから厳しい受験資格に感じますが、実務経験のハードル自体はそこまで高くないので受験を検討している人は詳細をしっかり確認してみましょう。

衛生管理者の出題科目

衛生管理者の出題科目は、次の内容になっています。

第一種衛生管理者第二種衛生管理者
労働衛生有害業務に係るもの:10問(80点)
有害業務に係るもの以外のもの:7問(70点)
有害業務に係るものを除いたもの:10問(100点)
関係法令有害業務に係るもの:10問(80点)
有害業務に係るもの以外のもの:7問(70点)
有害業務に係るものを除いたもの:10問(100点)
労働生理10問(100点)10問(100点)
合計得点400点300点
※参照:公益財団法人 安全衛生技術試験協会「受験資格」
(2024年1月11日時点)

第二種衛生管理者免許を受験した人は、特例第一種衛生管理者免許試験が受けられます。特例第一種衛生管理者免許試験は、有害業務に係るもの以外の項目や労働生理の項目が免除されるため、より有利に試験合格を目指すことが可能です。

衛生管理者の合格ライン

衛生管理者試験の合格ラインは、出題科目ごとの正解率が40%以上、かつ出題科目の合計点が60%以上であれば合格となります。

そのため、第一種・二種衛生管理者の合格基準はそれぞれ以下の通りです。

第一種・二種衛生管理者の合格基準
  • 第一種衛生管理者:400点中240点
  • 第二種衛生管理者:300点中180点

※すべての出題科目で40%以上の得点が必要

衛生管理者を取得するメリット

衛生管理者は、資格取得により恩恵を得られるからこそ受験すると考えられます。その恩恵は、事業者側の都合だけではありません。従業員が衛生管理者の資格を取得するメリットは以下の通りです。

それぞれ詳しく解説していきます。

労働関連の法律知識が身につく

衛生管理者の資格試験は、労働関連の法律知識を学ぶ機会になるでしょう。

衛生管理者の資格は、業種ごとに異なる労働環境の法律について学びます。それだけでも自身のスキルアップにつながります。また、法律知識を吸収しながら自社の労働環境改善に必要な知識も身につく点が実践的と言えるでしょう。

転職活動に役立つ

衛生管理者の資格は、転職活動にも役立ちます。従業員数50名以上が在籍するすべての事業場では、事業規模に応じた衛生管理者の配置を義務付けられています。そのため、衛生管理者資格の保有者はあらゆる業種において必要性のある存在です。

たとえば、従業員数が増加している成長企業などでは、その増加に準じて衛生管理者の人数を増やさなければなりません。その状況に便乗できれば、資格保有者は成長企業への転職も夢ではないでしょう。ただし、転職には資格だけではなく、人事・労務関連の経験のほうが重要な場合もあります。そのため、資格以外の実務経験の積み重ねも重視しましょう。

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上位資格「労働衛生コンサルタント」を目指すことが可能

衛生管理者の資格取得は、上位資格の労働衛生コンサルタントの資格取得にも役立ちます。衛生管理者は、10年の実務経験を積み重ねれば労働衛生コンサルタントの受験資格が得られるとのことです。

労働衛生コンサルタントは、衛生管理者の上位資格です。労働衛生コンサルタントの資格保有者は、ひとつの事業場に従事する立場ではありません。コンサルティング契約を交わした事業者に助言する立場として、複数の企業との契約が期待できます。

参照:公益財団法人 安全衛生技術試験協会「受験資格」

衛生管理者を取得する際の注意点

衛生管理者の資格取得を検討するうえで、事前に理解しておくべき注意点として以下が挙げられます。

衛生管理者を取得する際の注意点

就職に直結する資格ではない

衛生管理者の資格は、取得するだけで就職を確約できるわけではありません。もちろん、事業場によっては、衛生管理者が必要な企業もあるでしょう。とはいえ、衛生管理者の資格さえあれば就職に有利とは言い切れません。

衛生管理者の資格は、資格手当や昇進、昇給などの判断要素にもなるでしょう。ただし、対象となるのは企業に在籍する従業員や他社での経験がある転職者などです。

衛生管理者としての求人は少ない上に実務経験者が優遇される傾向が強いので、転職希望の場合、資格取得後はまずは経験を積むとよいでしょう。

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実務経験が必須の資格

衛生管理者の資格は、受験資格となる学歴に適した実務経験が求めら手織り、最終学歴によって実務経験が1年〜4年以上の範囲で必要となります。

衛生管理者の実務経験は事業者証明書によって申告しますが、これは受験者自ら記入できない書類です。実務経験を積んだ会社による記入が求められるため、受験の際には自社の上司にしっかり確認しておきましょう。

キャリアバディマガジン編集部

実務経験のハードルは決して高くないので、自身の仕事内容で実務経験に外とするものが無いかしっかり確認しておきましょう。

衛生管理者の難易度についてよくある質問

衛生管理者の資格取得には、いくつか共通する疑問も考えられます。ここでは、よくある質問について解説していきます。

衛生管理者は独学合格可能か

衛生管理者の試験は、独学でも合格可能な内容です。参考書や問題集を活用した独学で問題なく合格を目指せます。

ただし、独学の場合は自分で学習計画や試験対策などを立てなければならないため、効率よく学ぶためには通信講座の活用も検討するとよいでしょう。

衛生管理者合格に必要な学習時間の目安

衛生管理者合格に必要な学習時間の目安は、第一種衛生管理者で約100時間、第二種衛生管理者で約60時間です。

もちろん個人差はあるため、試験に挑戦する人はまずは参考書を購入して、試験範囲全体の概要をつかむとよいでしょう。

第一種衛生管理者と第二種衛生管理者どちらを取得すればいいのか

第一種衛生管理者と第二種衛生管理者では、対象となる業種が異なります。

第一種衛生管理者は、すべての事業場で通用する資格ですが、一方の第二種衛生管理者は、有害業務との関連が低い通信業や金融業など特定の業種のみ対応しています。

そのため、製造業や建設業などの事業場における衛生管理者の場合は、第一種衛生管理者の資格取得が必要です。

上記を踏まえ、自身に必要な資格が第一種か二種か判断して受験するとよいでしょう。

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どんなときに衛生管理者の資格が必要になるの?

一定の条件を満たす事業所においては月1回の「衛生委員会」の開催が必須と法律で定められており、それに伴って従業員人数に応じて衛生管理者が必要となります。

常時50名以上が働いている事業者であれば最低でも1人以上の衛生管理者が必要となっています。そのため、既に衛生委員会を開催している事業所で現任の衛生管理者がいなくなる場合や、事業所の人数が増えて衛生委員会の設置が必要になった場合などに、国家資格の取得が必要になります。

衛生管理者の難易度と合格率まとめ

衛生管理者の資格取得は、約半数が合格する状況から難易度は低いと考えられます。

前述したとおり、同じ技術、労働に関する国家資格である社会保険労務士の合格率は例年10%以下を推移しているのに対し、衛生管理者の合格率は、第一種衛生管理者で45.8%、第二種衛生管理者で51.4%(2024年1月11日時点)となっています。

そのため、衛生管理者は合格が難しくない国家資格とも言えるでしょう。

ただし、衛生管理者の資格取得には実務経験が必須である点には注意が必要です。

実務経験は、受験者による自己申告ではなく、勤め先が証明する事業者証明書の提出で認められます。そのため、資格取得を検討している人は、受験資格の最終学歴に適した実務経験年数の理解が必要です。そのうえで勤め先や転職先の業種に適した衛生管理者の資格を目指しましょう。

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