医療の現場で働く看護師には「看護師」と「准看護師」の2種類があります。「業務内容はどちらも同じ?」「具体的に何が違うの?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
それぞれの違いや准看護師の目指し方、さらには看護師へのキャリアアップ方法まで解説します。
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准看護師とは
准看護師が誕生した背景には、第二次世界大戦後の看護師不足にあります。
看護師になるためには高卒の資格が必要ですが、当時は高校に進学する人が少なく、看護師の数が増えなかったようです。
そのような中で、准看護師は中卒の資格でも取得できるように学歴を緩和し、看護師不足を解消するために誕生した職業です。
以下では
- 准看護師の仕事内容
- 准看護師ができることとできないこと
- 准看護師の主な職場
について具体的に解説します。
准看護師の仕事内容
准看護師の仕事内容は、看護師と変わりません。
勤務先や配属先によって行う看護業務は様々ですが、バイタルチェックや採血、点滴、カルテ記入などを看護師と同じように行います。そのため、看護師と同等のスキルや知識が必要です。
ただし、これらの業務は医師や看護師の指示のもとに行います。准看護師が自分で判断して行うことはできず、他の看護師に指示を出すこともできない点には注意が必要です。
参照:公益財団法人日本看護協会「看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド」
准看護師が出来ることとできないこと
准看護師ができることは以下の通りとなっており、業務内容そのものは看護師(正看護師)とそこまで変わりありません。
- バイタルチェック
- 採血、点滴、注射
- カルテ記入
- 入浴、排泄、食事の介助
- 診療や手術補助
- 体位変換や移送、移乗の介助 など
上記のように、看護師が行っている業務を准看護師も同様に行えます。
しかし、以下のような業務は准看護師は行えないので、注意しておきましょう。
- 自己判断による看護業務
- 他の看護師への指示出し
- 看護計画の立案
- 管理職への昇進が困難
准看護師は、経歴や年齢に関わらず他の看護師に指示出しができません。そのため、リーダーシップを発揮する機会は少なく、主任や師長への昇進の機会が乏しく、管理職になるのは非常に困難だといえるでしょう。
准看護師は臨床現場での活躍が求められ、その業務が主になります。将来的に管理職を目指したいと思っている人は、看護師へのキャリアアップを考えると良いでしょう。
看護師の業務の中で、看護計画の立案は患者さん一人一人へ適切な看護を提供するために重要な業務の一つです。ですが、准看護師の養成課程では看護計画の立案は履修しないため、カルテ入力はできても立案はできません。しかし、患者さんと関わる以上、患者さんが抱えている問題やリスクを理解し、適切な看護を行うことは必要です。
准看護師の主な職場
准看護師が働ける職場は看護師とあまり変わりません。准看護師だからといって働けない職場は少ないですが、応募条件などに看護師と記載されていることもあるため注意が必要です。看護師不足のために、准看護師を積極的に採用している施設も多くあるので、求人をしっかり確認して自分の希望に合った職場を探してみましょう。
准看護師の職場として最も多いのは「病院」で、常勤換算で准看護師全体の38.1%を占めています。次に多いのは「診療所」で31.1%、「介護保険施設等」24.1%と続きます。
以下は准看護師と正看護師の就業場所上位3か所の常勤換算就業比率です。
病院 | 診療所 | 介護保険施設 | |
---|---|---|---|
准看護師 | 38.1% | 31.1% | 24.1% |
看護師(正看護師) | 72.2% | 11.5% | 7.1% |
看護師の就業場所比率と比較すると、この3つの職場が大半を占めているのは変わりませんが、准看護師は病院で勤務している割合が低いことが分かります。
病院は一般的な看護技術を身につけられることはもちろん、様々な診療科を経験できるため、現場で働く准看護師としては良い経験になるでしょう。また、夜勤があれば手当がつくので給料が高くなるのも魅力です。
診療所は日勤のみの勤務が多く、身体的負担は少ないでしょう。スタッフの人数が少なく、医師から直接指示を仰ぎやすい状況のため、准看護師が多く就職していることに繋がっているのかもしれません。
看護師と准看護師の違い
准看護師と看護師の仕事内容や職場の差はほとんどないことを述べてきましたが、続いて看護師と准看護師の違いについて解説していきます。看護師との違いを主に3つ紹介します。
- 資格の違い
- 求められるスキルの違い
- 准看護師は医師や看護師の指示が必要
これらの違いを理解しておくと、准看護師のメリット・デメリット、看護師を目指すか、准看護師を目指すかが明確になるでしょう。
以下に詳しく解説していきます。
看護師と准看護師の資格の違い
看護師と准看護師では免許の発行元が異なり、准看護師は都道府県知事から、看護師は国家資格として厚生労働大臣から免許を受けます。
- 看護師:厚生労働大臣
- 准看護師:都道府県知事
保健師助産師看護師法には以下のように記載されています。
第五条
この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
第六条
この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。
引用:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」
看護師は国家資格となるため、准看護師より資格取得のハードルが高いといえます。
また、看護師は高校を卒業しなければなりませんが、准看護師は中学を卒業すれば准看護師養成所または高校衛生看護科(3年)に入学し、准看護師を目指せるのも大きな違いです。
看護師と准看護師の求められるスキルの違い
看護師と准看護師の仕事内容には大きな差はありませんが、教育の過程で養うスキル・能力に違いがあります。
日本看護協会の「看護業務基準」によると、看護師と准看護師それぞれの教育の基本的な考えは、以下の通りです。
- 看護師
-
科学的根拠に基づいた看護の実践に必要な臨床判断を行うための基礎的能力を養う
- 准看護師
-
医師、歯科医師、又は看護師の指示のもとに、療養上の世話や診療の補助を、対象者の安楽を配慮し安全に実施することができる能力を養う
看護師と准看護師では求められる水準が異なることが分かります。
また、厚生労働省による「看護師等養成所の運営に関する指導ガイドラインについて」では、看護師と准看護師に求められる実践能⼒と卒業時の到達⽬標についても、それぞれ以下のように違いが言及されています。
- 看護師
-
根拠に基づき、看護を計画的に実践する能⼒
(看護師の実践能力Ⅱ群) - 准看護師
-
看護師の⽴案した看護計画を基に看護を実践する能⼒
(准看護師の実践能力Ⅱ群)
准看護師は、情報収集や看護計画を理解し実践することが求められていますが、情報からのアセスメントや看護計画の立案・修正をすることは求められていません。
患者の安楽・安全を考えて業務を行うのは看護師も准看護師も同じですが、看護師には患者さんのアセスメントを行い、必要な看護を考える能力、自主的に看護業務ができる能力が求められます。もちろん、看護師が医師の指示なく処置を行ったり、薬を投与したりはできませんが、今この患者の問題は何か、何が必要かを考え医師に指示を仰ぎ、看護に活かすことが重要な職務です。
しかし、准看護師であっても、患者からは一人の「看護師」としてみなされます。
臨床現場では、立案された看護計画を理解し実践する必要があります。「准看護師だからできない」「指示されたことだけをやる」という考えではなく、しっかりと技術と知識を身に付けることが大切です。
准看護師は医師や看護師の指示が必要
先述した通り、准看護師は医師や看護師の指示の下で看護業務を行います。
例えば、患者さんに移乗の介助を頼まれたときや、点滴が漏れてしまったとき、急な処置が必要になったときなど、看護師であれば自分の判断で移乗の介助を行います。点滴の差し替え、必要な処置も行えます。しかし、准看護師の場合は、医師や看護師に患者さんの状況を伝えて、指示を受けてからでないとその業務は行えません。
看護師と比べると自由度は低く、仕事の効率も下がることにストレスを感じる人もいるでしょう。
しかし、准看護師も仕事内容自体は看護師と大きく変わりません。
「指示を受けなければ何もできない」と考えるのではなく、指示を受けてからであっても自分の業務に責任を持ち、スピード感を持って動くことが大切です。また、どのような指示が出されるかを予測しながら業務を行うこと、患者さんの状況を簡潔かつ分かりやすく報告することで、迅速な対応ができるようになるでしょう。
准看護師になるには?
准看護師になるためには、受験資格を満たしたうえで、各都道府県で実施される試験に合格して資格を取得しなければなりません。
准看護師になるには2つのルートがあります。
- ルート1
-
中学を卒業し、准看護師養成所(2年)や高校衛生看護科(3年)で必要科目を履修する
- ルート2
-
高校を卒業し、准看護師養成所(2年)で必要科目を履修する
准看護師養成所は、看護師よりも受験資格を得るための学習期間が短く、学費も抑えられます。受験に必要な科目を効率的に学び、できるだけ早く看護職として働きたいと思う人にはオススメです。
准看護師は中学を卒業していれば養成所に入学できるので、社会人になってからでも、働きながらチャレンジすることも可能です。また、普段主婦業をやっていて、「手に職をつけたい」「隙間時間で勉強して資格を取って働きたい」と思う人でも、やる気があればチャレンジしやすい資格でもあります。
看護師不足により、准看護師は就職や転職には困らないので、准看護師はとても魅力的な資格・職業といえます。
准看護師養成所について
准看護師養成所には全日制と半日制があります。全日制は週3日というケースが多く、朝〜夕方まで授業を行います。
半日制は週5日のケースが多く、午後や夜間に授業が行われます。総学習時間は1890時間となっており、1年目は履修、2年目は実習が中心です。
「働きながら通いたい」「勉強に専念したい」など自分のライフスタイルに合わせて選べるのが魅力です。
准看護師試験の概要
准看護師養成所で必要科目を履修後、准看護師試験の受験資格を得られます。准看護師試験の概要は以下の通りです。
試験日程 | 例年2月上旬~中旬 |
---|---|
合格発表日 | 3月上旬~中旬 |
試験形式 | マークシート(150問) |
合格基準 | 満点の60%(90点/150点) |
試験科目 | 人体の仕組みと働き 食生活と栄養 薬物と看護 疾病の成り立ち 感染と予防 看護と倫理 患者の心理 保健医療福祉の仕組み 看護と法律 基礎看護 成人看護 老年看護 母子看護及び精神看護 |
参照:厚生労働省「准看護師試験基準」
准看護師試験は毎年2月上旬から中旬にかけて、各都道府県で行われます。
都道府県ごとに試験日が異なるので、同年に複数の都道府県での受験が可能です。その場合はそれぞれの受験場所での出願申請が必要なので事前に確認をしておきましょう。看護師の場合は全国で同日、年に1度しか試験がないので、看護師と比べ、挑戦できるチャンスが多く合格の可能性が高まります。
准看護師国家試験では、150問マークシート形式により出題され、1問1点、基本的に90点以上(60%)が合格ラインとなります。
准看護師の難易度と合格率
准看護師の試験難易度は高くなく、合格を得やすい試験といえます。
准看護師の過去5年分の受験者数と合格率の推移を、下表に示しましたのでご確認ください。
実施年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2022 | 13,831人 | 13,554人 | 97,9% |
2021 | 14,408人 | 14,122人 | 98% |
2020 | 15,198人 | 15,052人 | 99% |
2019 | 16,867人 | 16,233人 | 96,2% |
2018 | 17,449人 | 16,910人 | 96,9% |
参照:厚生労働省「令和4年度准看護師試験の実施状況を公表します」
試験問題は都道府県によって異なりますが、合格率は過去5年間いずれの年も96%を越えており、高い水準となっています。
看護師国家試験の合格率は90%前後となっているため、資格試験合格のハードルは准看護師の方がやや低いといえるでしょう。
准看護師が看護師になるための方法
准看護師から看護師へのキャリアアップも可能です。准看護師から看護師になると給料が上がったり、さらなるキャリアアップ(専門看護師や管理職など)も考えられたりと、多くのメリットがあります。
准看護師から看護師になるにはいくつかの方法がありますが、いずれも看護師学校養成所2年過程を修了する必要があります。
看護師学校養成所とは、准看護師が看護師になるための教育過程で、以下の3つの種類があります。
- 全日制
- 定時制
- 通信制
中学卒業の場合は実務経験が必要(就業場所や雇用形態は問わない)となるため、注意しておきましょう。都道府県や病院によっては、奨学金や給付金の制度もあるので、調べてみると良いでしょう。
全日制(2年)
准看護師の資格取得後、最短で看護師資格を取得する方法のひとつが「全日制の看護師養成所」を修了するルートです。
主に週5日、日中に学校へ通い授業を受ける必要があるので、臨床から2年間離れてしまいますが、その分勉強に集中できる環境にあります。
経済的に余裕があり、勉強に集中できる環境が整っている方には、全日制がオススメです。以下で紹介する定時制や通信制より、生活リズムを整えやすいのも魅力といえるでしょう。
定時制(3年)
全日制と比べ、1日の授業時間が少なく、准看護師として働きながら看護師を目指せます。その場合は臨床現場から離れることはないので、看護技術を落とさずに勉強ができる上、経済的な負担も軽減できるでしょう。
定時性も全日制と同様、中学卒業の場合は3年以上の実務経験が必要となるため、自身の実務経験をしっかり確認しておく必要があります。
定時制には昼間定時制と夜間定時制があり、自分の都合に合わせて通える点がメリットです。しかし、准看護師として勤務している病院の協力が得られないと難しい場合もあるので、職場へ早めに確認・相談を行いましょう。
また、平日に授業を行っていない学校もあるため、働きながら定時制の養成所に通う場合はしっかり調べたうえで学校を選ぶとよいでしょう。
通信制(2年)
看護師養成所の課程を「通信制の看護師養成所」で終了することも可能です。
座学は通信教材で行い、面接授業や学校での実習のために通学するのは、2年間で50日程度です。
通学日数が少ないので、「学校が遠くて通うのが大変」「主婦業や子育てと両立しなければならない」などの事情がある方には、通信制がオススメです。
自分の自由が利く半面、ついサボりがちになってしまうため、「絶対2年で合格する」強い意志をもって取り組む必要があるでしょう。
看護師と准看護師の違いまとめ
これまで准看護師について、看護師と比較しながら解説してきました。
厚生労働省の調査によると、准看護師の数は年々減少していますが、今後の高齢化や医療の多様化・複雑化、慢性的な看護師不足を考えると、看護職の需要は今後より一層高まることが予測されます。准看護師も同様、貴重な医療の担い手としてその需要はなくならないでしょう。
しかし、そのような背景があることから、自立性を持った看護師が求められ、今後准看護師は看護師と一本化される動きもあります。日本看護協会では、准看護師養成所の新設の阻止や、現在就業している准看護師へ看護師学校養成所への進学支援などを行っています。
准看護師看護師と比べ、試験難易度が低い、取得までの期間が短いなどのメリットがありますが、一方で給料が低い、キャリアアップができないなどのデメリットもあります。それらを理解し、自分の状況に合わせて准看護師か、看護師か、もしくは准看護師から看護師へのキャリアアップを目指すのか、最適な選択を行いましょう。
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