協会けんぽの令和元年度現金給付受給者状況調査報告によると、就業不能になった理由の第1位は「精神及び行動の障害」であり、全体の31.3%にのぼります。
参照:全国健康保険協会「現金給付受給者状況調査(令和元年度)」
そのため、メンタル不調の未然防止は企業の損失を抑えるためにも大切な経営課題であると言えます。産業カウンセラーは、最近注目される企業のメンタルヘルス対策に役立つ資格の1つです。
本記事では、産業カウンセラーの資格取得難易度や合格率、資格取得の流れについて解説していきます。
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産業カウンセラーとは
産業カウンセラーとは、心理学的手法を用いて「働く人たちが抱える問題」に寄り添い、自らの力で解決できるよう導くことを主な業務とする支援者をいいます。カウンセリング業界においては知名度の高い資格ですが国家資格で社なく、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定している民間資格です。
産業カウンセラーの活動領域は「メンタルヘルス対策」と「キャリア形成」、「職場における人間関係開発・職場環境改善」の3つで、企業内で働く人の支援を行う専門家です。
心理学系の資格は唯一の国家資格である「公認心理師」以外にも、多くの民間資格が存在します。産業カウンセラーはその中でも産業領域に特化しており、知名度が高い心理資格の1つです。
日本産業カウンセラー協会が主催している養成講座を受講すれば、専門の大学や大学院を修了していなくても取得を目指せる点が魅力的で、試験の難易度も高くない点が特徴です。
参照:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会「協会について」
産業カウンセラーはあくまで資格の名称
産業カウンセラーは、スクールカウンセラーのような職業名ではなく、あくまで資格の名称として使われている点に注意しましょう。そのため、産業カウンセラーでなければ産業領域でカウンセラーとして働くことができない、ということはありません。
産業領域で活躍するカウンセラーは、企業内カウンセラーなどと総称されているのが一般的で、産業カウンセラーの有資格者だけではなく、臨床心理士や公認心理師等が携わっています。
また、心理士だけでなく精神科医や看護師、保健師などのさまざまな専門家が企業内カウンセラーとして働いている場合も多くあります。
産業カウンセラーの難易度はどれくらい?
産業カウンセラーの資格取得難易度は、決して高くありません。
その他の心理系資格と比較しても、合格率や取得条件などの要素を総合的に勘案しても、資格の取得難易度は高くないといえるでしょう。産業カウンセラーの資格は難しくない理由は以下の通りです。
- 合格率は学科試験と実技試験ともに60%前後
- 養成講座を修了することで受験可能
- 資格更新に必要な要件が難しくない
合格率は学科試験と実技試験ともに60%前後
2023年度の産業カウンセラー試験の合格率は、実技・学科試験ともに60%前後(下表参照)となっており、受験者の半数以上が合格に至っていることが分かります。
実施内容 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
学科試験 | 954名 | 637名 | 66.8% |
実技試験 | 313名 | 197名 | 62.9% |
総合 (いずれか1科目でも受験した人の人数) | 1040名 | 626名 | 60.2% |
心理系唯一の国家資格である「公認心理師」の第1回試験の合格率は初年度79.1%と高い数字となっていましたが、2回目は46.4%、3回目は53.4%となっています。そのため、最新の試験回で比較すると公認心理師より産業カウンセラーの合格率の方が高いことが分かります。
また、公認心理師受験のためには、基本的に大学をはじめとした専門機関で学ぶ必要があり、産業カウンセラーよりもハードルが高いことを考えると、相対的に産業カウンセラーは取得難易度が易しい資格であるといえます。
養成講座を修了することで受験可能
産業カウンセラーと同じ心理系資格である「臨床心理士」「公認心理師」は大学や大学院で所定の単位取得が必要であることに対し、産業カウンセラーは、協会が主催する養成講座を受講することで、心理系の大学を卒業していなくても最短半年で受験資格を得ることができます。
(※臨床心理士は大学と大学院を合わせて必要な単位を6年かけて修了する必要があり、公認心理師は大学4年間で必要な科目を履修することに加え、2年間の実務経験、もしくは大学院の修了が必要)
そのため、受験資格の面から見ても、他の心理系資格より取得ハードルが低いといえるでしょう。
資格更新に必要な要件が難しくない
産業カウンセラーは5年毎に資格の更新が必要です。
産業カウンセラーの資格更新のためには、5年間のうちに1日6時間の「資格更新登録研修」か、本部ないし支部が主催する「みなし資格更新登録研修」を合計6時間以上受講する必要があります。
これに対し、例えば「臨床心理士」も5年ごとの更新制ですが、その間に3領域以上にわたり研修を受け、15ポイントを取得しなければなりません。
そのため、臨床心理士に比べると更新のために必要な時間は短く、ハードルが低いといえるでしょう。
参照:一般社団法人日本産業カウンセラー協会「資格登録・更新制度」
産業カウンセラーの合格率
前述の通り、産業カウンセラーの取得難易度は決して高くありません。産業カウンセラーの取得難易度についてより詳しく知るために、実際の合格率実績を確認していきましょう。
ここからは産業カウンセラーの合格率と、産業分野における他の資格試験の合格率について解説していきます。
産業カウンセラーの合格率推移
2020年以降の産業カウンセラーの合格率推移は下表の通りです。
試験年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023年 | 1040名 | 626名 | 60.2% |
2022年 | 1120名 | 654名 | 58.4% |
2021年 | 1758名 | 1076名 | 61.2% |
2020年 | 2159名 | 1354名 | 62.7% |
これを見ると分かるように、産業カウンセラーの合格率は60%前後を推移しています。受験生の半数以上が合格出来るため、決して難しい試験ではないことが分かります。
他の資格試験の合格率を比較
産業カウンセラーと、産業分野、メンタルヘル分野で活躍できる他資格の合格率を以下表にまとめました。
試験名 | 試験日時 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
産業カウンセラー | 2023年6月 | 1040名 | 626名 | 60.2% |
キャリアコンサルタント | 2024年3月3日(日) | 1,229名 | 603名 | 49.1% |
労働衛生コンサルタント | 2023年10月17日(火) | 778名 | 208名 | 24.4% |
メンタルヘルス・マネジメント検定 Ⅲ種 | 2024年3月17日(日) | 4,648名 | 3,353名 | 72.1% |
メンタルヘルス・マネジメント検定 Ⅱ種 | 2024年3月17日(日) | 12,483名 | 9,137名 | 73.2% |
メンタルヘルス・マネジメント検定 Ⅰ種 | 2022年11月6日(日) | 1,628名 | 287名 | 17.6% |
社会保険労務士 | 2023年8月27日(日) | 42,741名 | 2,720名 | 6.4% |
上表を見ると分かるように、産業カウンセラーと同じくキャリア支援分野で活躍する「キャリアコンサルタント」や、企業の労働衛生分野で活躍する「労働衛生コンサルタント」等の国家資格と比較すると、合格率が高いことが分かります。
このことからも、産業カウンセラーは比較的取得しやすい資格といえるでしょう。
産業カウンセラー試験の概要
産業カウンセラー試験は年に2回、6月〜7月と1月に実施されます。試験概要は以下の通りです。
資格名 | 産業カウンセラー |
---|---|
試験日時 | 年2回実施 (例年6~7月・1月に実施) |
受験場所 | 【学科試験】 東京都、高崎市、名古屋市、金沢市、大阪市、広島市、高松市、福岡市 【実技試験】 千葉市、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市 |
試験内容 | 【学科試験】 ・基礎的な知識を問う試験:マークシートで40問程度 ・事例への対応能力・対話分析力を問う試験:マークシートで20問程度 【実技試験】 ・受験者同士でのロールプレイと試験管との口述試験 |
試験団体 | 一般社団法人日本産業カウンセラー協会 |
産業カウンセラーの試験は年に2回実施されるため、年1回しか実施されない一般的な国家試験に比べ、チャンスの多い資格といえます。
また、筆記によって行われる学科試験だけではなく、受験者同士によるロールプレイを行う「実技試験」もある点が特徴といえるでしょう。
産業カウンセラーの受験資格
産業カウンセラー試験は、養成講座を受講していれば受験資格を得ることができるほか、大学や大学院で協会指定の単位を取得した人も、一定の条件を満たせば受験資格を得ることができます。その場合は別途、受験資格判定を受ける必要があります。
産業カウンセラー試験を受験するための要件は、主に以下の通りです。
- 協会が行う産業カウンセリングの学識及び技能を習得するための講座を修了した者。
- 大学院で協会指定の単位を取得した者。
- 4年制大学において協会指定の単位を取得した者。
産業カウンセラー受験の流れ
産業カウンセラー試験の受験の流れは下記の通りです。
産業カウンセラーを目指すには、まずは受験資格を確認したうえで、必要に応じて養成講座を受講します。
養成講座を修了後、産業カウンセラー試験(学科・実技)に合格すれば資格者として登録が可能となります。ただし、産業カウンセラーとして登録後も、5年ごとの資格更新手続きのために所定の研修を受講が必要になるので、注意しておきましょう。
インターネットから養成講座に申し込む
産業カウンセラーになるためには養成講座の受講が必要です。養成講座は6ヶ月コースと10ヶ月コースに分かれています。受講形態も通学のみや通学とオンラインの併用、オンラインのみのコースに分かれており、受講者の状況に合わせて選択可能です。
体験型のカウンセリング演習や理論学習、ホームワーク、理解度確認テストなどを受講できます。
養成講座修了後に受験申し込み
養成講座を終了後、産業カウンセラー試験への受験申し込みが可能です。また、協会の面接実習において一定の成績に達したと認められる者については、実技試験の免除を受けることができます。実技試験免除の申請は、受験申し込みと同時に申請します。
受験の約2ヶ月後に合否発表
試験の合否は、試験の2ヶ月後に郵送で発表されます。合格証明書と同時に届く資格登録手続き書類で手続きを済ませると、晴れて産業カウンセラーになることができます。
資格取得後も、5年ごとに資格更新に関わる研修の受講が必要です。忘れずに受講するようにしましょう。
産業カウンセラーの養成講座
産業カウンセラー試験の養成講座は、e-Learningを活用した理論学習と、実際に面接技法などを体験型演習によって構成されています。体験型のカウンセリング演習に関しては通学と通学+オンライン、オンラインの3形態から選択受講が可能です。
期間についても、6ヶ月間短期集中的に短い回数で演習をするものから、10ヶ月間じっくり取り組み回数を分けて取り組むものまでさまざまなコースがありますので、自分の状況に合わせることができます。
受講形態は「通学」と「通学+オンライン」「オンライン」の3種類
養成講座のうち、体験型のカウンセリング演習については、通学と通学+オンライン、オンラインの3形態から選択し受講することが可能です。
通学は1日6~7時間程度、指定の教室で行うものです。通学とオンラインでは、1日3~7時間程度のZoomを利用した講座と通学を併用し行います。オンラインでは、1日3~7時間のZoomを利用した講座を受講します。
その他、理論学習や確認テストは基本的にe-Learningで行います。
受講形式は短期集中の「6ヶ月コース」とじっくり取り組む「10ヶ月コース」の2種類
6ヶ月コースの場合は、土日と平日に15~16回の体験型のカウンセリング演習を行います。10ヶ月コースの場合は、土日と平日以外に平日夜間も演習を受講可能です。その場合は、33~36回に分けて取り組みます。
その他の理論学習や確認テストについては、時間の指定はありますが実施タイミングの指定はありませんので、e-Learningで自分のペースで行うことができます。
産業カウンセラーのおすすめ試験勉強法は?
産業カウンセラーのおすすめの試験勉強法は、養成講座を軸にした反復学習と、実技試験に向けたスクーリングや逐語記録作成の併用です。
養成講座を受け、自分の理解が不十分なところを見直すために演習問題や厳選問題集を解くのがおすすめです。対面のスクーリングを受け、振り返りの逐語記録や課題レポートを作成することで、自分の応答を見直しておけると良いでしょう。
産業カウンセラー養成講座で基礎を学ぶ
産業カウンセラー試験に向けて基礎学習としておすすめなのは、養成講座の受講です。産業カウンセラー養成講座では、体験型のカウンセリング演習を104時間行うことができるため、心理学やカウンセリング初心者の方でも、しっかりスキルを身に付けることが出来ます。
その他、演習に関するホームワークが6題、28時間程度課され、e-Lerningを利用した講義動画の視聴は34時間程度、同じくオンライン上の確認テストが13時間程度と充実した内容になっています。そのため、産業カウンセラーとして活躍するために必要な基礎を固めるには十分な内容です。
大学や大学院において指定の単位を取得していない方は、受験のために産業カウンセラー養成講座修了は必須になりますが、受験資格を満たす人であっても「改めてスキルを磨きたい」と考えている人は養成講座の受講がオススメです。
演習問題を解く
養成講座を受講し、試験に必要な知識をある程度身につけることができたら、協会が刊行している「産業カウンセラー試験演習問題集」を利用し自主学習を進めるもの1つの方法です。
産業カウンセラー試験の学科試験では、基礎知識や事例の対応能力が求められます。本演習問題集では、特に学科試験の事例問題について過去の出題例が収録されているため、貴重な過去問としての活用が可能です。
スクーリングを受ける
産業カウンセラーの実技試験に備えて、オンラインコースで受講する場合であっても、数回はスクーリングの対面講座を受講することをおすすめします。対面で演習を行うことで、対面の緊張感に慣れることができ、表情や声の調子からクライエントの調子を読み取る能力の向上が期待できます。
養成講座は完全オンラインの場合でも、約4日間の28時間は会場のスクーリングで行います。日頃忙しい場合でも数日だけは調整して、できる限り参加すると良いでしょう。
逐語記録を作成する
逐語記録とは、カウンセリングの面接内容などを録音し、後から一言一句を忠実に書き出し見直すための記録をいいます。養成講座などでカウンセリング演習がありますので、ぜひ一度、自分のカウンセリングの記録を逐語に起こして見直すようにしてみましょう。
逐語に起こすと、思わぬ自分の応答のクセが発見できることがあります。最初は気恥ずかしく感じたり抵抗感があるかもしれませんが、逐語記録の作成や見直しはカウンセラーとして成長するための必須トレーニングといえるでしょう。
課題レポートを出す
養成講座を受講すると、受講期間中に3回の課題レポートの提出があります。提出タイミングと内容はカウンセリング演習と関連しており、実技試験で問われる内省力がここで求められます。
各レポートを提出することにより、頭の中の曖昧な気持ちや考えなどを言語化する訓練になり、自己理解を深める助けにもなるのでおすすめです。
反復学習
上記の勉強をひと通り終えることが出来たら、後はひたすら復習を繰り返し試験勉強をするのみです。復習には養成講座で配布されるテキストや、演習問題集などが役立ちます。
それらも終えてしまい手持ち無沙汰な場合は、協会が刊行している厳選問題集に取り組んでみても良いでしょう。自分が間違えた問題は特に念入りに、繰り返し解き内容を頭に入れるようにするのがポイントです。
他の産業分野やカウンセラー資格との違い
産業分野に関する資格や心理カウンセラー関連の資格は、産業カウンセラー以外にも複数存在します。
自分がどのような立場で支援したいのか、環境調整かそれともキャリア支援か、カウンセリングをしたいのかにより取得すべき資格が変わりますので注意しましょう。
ここでは、社会人でも取得可能な産業分野の以下の資格について紹介していきます。
- 労働衛生コンサルタント(国家資格)
- キャリアコンサルタント(国家資格)
- メンタルヘルス・マネジメント検定(民間資格)
- シニア産業カウンセラー(民間資格)
上記資格について、それぞれ詳しく解説していきます。
労働衛生コンサルタント(国家資格)
労働衛生コンサルタントは、厚生労働大臣より労働安全・労働衛生のスペシャリストとして認められている国家資格です。労働者の安全衛生向上のため、事業場の診断や指導を行います。診断および指導の他にも、労働安全衛生施作に関する相談や教育、講演、資料の提供などの業務を行っています。
労働衛生コンサルタントは主に職場環境の改善を行いますが、産業カウンセラーは職場のメンタルヘルスやキャリア、対人関係の支援を行う点において異なります。
また、労働衛生コンサルタントは必ずしも心理・カウンセリング領域において知識とスキルがあるわけではなく、産業カウンセラーとの共通点は少ない資格といえるでしょう。
キャリアコンサルタント(国家資格)
キャリアコンサルタントとは、学生や求職者、在職者の職業の選択、キャリア設計、職業能力の開発及び向上に関する相談に応じ、助言及び指導を行う国家資格です。
キャリアコンサルタントは産業カウンセラーと比較対象とされることが多い資格です。産業分野において活躍する場面が多いことや、心理学やカウンセリングスキルを用いて相談者(クライアント)の課題解決を支援する点も、産業カウンセラーとの共通点が多いといえるでしょう。
産業カウンセラーの養成団体である「一般社団法人日本産業カウンセラー協会」においても、キャリアコンサルタントを養成する講座が開講されており、「傾聴スキル」を重視したスキルを学ぶことが可能な内容となっています。
メンタルヘルス・マネジメント検定(民間資格)
メンタルヘルス・マネジメント検定とは、働く人たちの心の不調を未然に防ぎ、活力ある職場づくりを目指すために、職場での役割に応じて「メンタルケア」を学ぶ検定試験です。大阪商工会議所が主催している民間資格です。
メンタルヘルス・マネジメント検定は管理職や上司、従業員がそれぞれメンタルヘルスに対する知識を得ることが可能ですが、カウンセリングに関sる知識やスキルを学ぶことは出来ません。そのため、産業カウンセラーはメンタルケアだけでなくカウンセリングも行う点において違いがあるといえます。
シニア産業カウンセラー(民間資格)
シニア産業カウンセラーは産業カウンセラーの上位に位置する民間資格です。産業カウンセラーの3つの活動領域の仕事はもちろん、組織開発やコンサルティングも行います。また、シニア産業カウンセラーは、産業カウンセラーの教育指導や産業カウンセリング教育の開発研究等、スーパーバイザー的な役割を担います。
産業カウンセラーとして活躍している方が、更にスキルアップを目指す際に取得を検討すべき資格のひとつといえるでしょう。
産業カウンセラーの求人が出ている職種
産業カウンセラーの資格を取得した場合、どのような仕事を行うことが出来るのでしょうか?
産業カウンセラーが応募条件となっている職種を、「求人検索エンジンIndeed」で調べた結果は以下の通りです。
- 電話相談事業
- EAP相談カウンセラー
- ハラスメント相談対応支援員
- 就労移行支援事業
産業カウンセラーの仕事は、特に都市部での求人が多く、常勤・非常勤等様々な働き方の求人があるため、ライフスタイルに合わせて働き方を選ぶことができる資格といえるでしょう。
電話相談事業
働く人の仕事や人間関係の悩みについて、電話やSNS相談を通じて支援を行うのが電話相談事業です。
非常勤のシフト制の求人が一般的で、他の仕事と掛け持ちで働く人が多いです。他の職場と比べて、オフィスで同業者と働く機会が多いので、対応にまつわる相談を同業者との間で共有しやすい環境といえるでしょう。
EAP相談カウンセラー
外部EAP(従業員支援プログラム)サービスの運営及び、サービスに関わるメンタルヘルス関連業務に携わるのがEAP相談カウンセラーです。
主に対面・オンライン面談を通じて、人事労務コンサルティングやストレスチェックの結果に基づいた訪問カウンセリング、通常のカウンセリング業務などを行います。
ハラスメント相談対応支援員
企業のハラスメント(コンプライアンス)相談対応支援員とは、企業の内部通報制度として機能し、パワハラ防止の窓口となり問題解決へ導くために支援する仕事をいいます。
主に、通報や電話相談のヒアリングやレポート作成を行います。契約企業と従業員の双方の思いをつなぎ、橋渡しとしての役割を担う仕事です。
就労移行支援事業
就労移行支援事業とは、障がいや病気のために就労に不安のある人たちが、企業に就職するために職業訓練を行い、就職活動のサポートを受ける支援機関です。
登録者との面談やキャリアアドバイス、職業紹介やフォロー業務などを行うのが主な仕事内容です。相談者の能力及び適性を踏まえ、サポートをする能力が求められます。
産業カウンセラーには3つの活動領域がある
産業カウンセラーの主な活動領域は以下の3つがあります。
- メンタルヘルス対策の支援
- キャリア形成の支援
- 職場における人間関係開発と職場環境改善の支援
産業カウンセラー資格を取得した人は、カウンセラーとして働くだけでなく、養成講座で身に付けた対人スキルを人事や総務、経営、管理業務に活かしている人も多くいます。また、企業以外の領域においても、医療や福祉、教育、司法の分野でスキルを活かして活躍している人もいます。
メンタルヘルス対策への支援
少子高齢化に歯止めがかからず、人材不足が続く日本企業においては「社員の心身の健康の確保」は経営に直結する重要な要素となっています。
そんな中において、産業カウンセラーが担う「メンタルヘルス対策への支援」の重要度は相対的に高くなっているといえるでしょう。グ田的な業務内容としては、ストレスチェック後のフォローといった予防的支援、危機介入や職場復帰への支援と産業カウンセラーの担う役割は幅広くなっています。また、カウンセリングだけでなく、メンタルヘルスに関する研修を企業内で実施することもあり、活躍領域は広がりを見せている状況です。
キャリア形成の支援
社会の変化に伴い、働く人の意識や働き方も多様化しています。結婚や出産、転職などの人生の節目度の悩み相談をはじめとして、現実的に自分に合った仕事を選択するための相談や研修など、個人のキャリア形成への支援の必要性が高まっています。
働く人のキャリア教育を行い、キャリア形成を目指してキャリコンサルティングを通じた支援を行うことも、産業カウンセラーの重要な仕事の1つです。
ただし、キャリア形成の支援においては、前述した国家資格である「キャリアコンサルタント」も同領域で活躍する資格のため、どちらを取得するべきかはしっかり考えて決めるとよいでしょう。
職場における人間関係開発と職場環境改善への支援
働きやすい職場を作るためには、個人のコミュニケーション力やセルフケア力を高めるだけでなく、職場環境自体をより良くしていくことも大切です。
産業カウンセラーは個人だけでなく、組織全体とも協働し、組織アセスメントを通じて職場環境改善に向けての提案をすることがあります。また必要に応じて、グループファシリテーション能力を開発するために研修を行います。
産業カウンセラー取得のメリットは?
産業カウンセラー取得のメリットは以下の通りです。
- 企業内のメンタル不調防止に役立つ
- キャリア支援が可能
- 従業員のコミュニケーションを円滑化できる
上記のメリットついて、詳しく解説していきます。
企業内のメンタル不調防止に役立つ
産業カウンセラーが従業員のメンタルヘルスを支援することで、うつ病や適応障害などの心の不調を未然に防いだり、ひどくなる前に適切な医療機関への連携等を行い、対策することができます。
結果として、求職・退職者を減らすことができ、メンタル不調による仕事の生産性低下も防げるため、企業にとってもメリットが大きいといえます。精神疾患になると集中力低下や興味関心の低下が起こりますが、こうしたことも防げるため従業員の仕事へのモチベーションも上がります。
「専門的な知識とスキルを活かしてメンタルヘルス領域の支援をしたい」と考えている人は、産業カウンセラー資格取得は非常に役立つ資格のひとつといえるでしょう。
キャリア支援が可能
産業カウンセラーの資格を取得することで、適切なキャリア支援を行うことが可能となります。
産業カウンセラーの養成講座を通し、カウンセリングやキャリア理論等を体系的に学ぶことで、企業内において従業員のキャリア支援・キャリア相談を行うことが可能となります。
企業内に「キャリア相談室」を設置する時や、部下や後輩と1on1面談やMBO面談を行うときにも、産業カウンセラーとして身に付けた傾聴スキルやキャリア理論は非常に役立つといえます。
従業員のコニュニケーションを円滑にできる
産業カウンセラーの知識とスキルを活かすことで、企業内部で上司や部下、同僚同士のトラブルが生じた際に、双方の言い分を聞いて仲裁し解決に導くことが可能となります。コミュニケーションを円滑化するための研修を提案して、従業員の人間関係を円滑化することも産業カウンセラーの大切な任務です。
個人のみならず、企業全体をアセスメントし、コミュニケーションが滞っているところはないか、もっと関係を円滑化できる方法はないか考えることで、職場環境全体をより良くすること可能となります。
産業カウンセラーの資格取得難易度と合格率まとめ
産業カウンセラーの資格取得難易度は高くなく、社会人からでも目指しやすいカウンセリング資格です。
大学で心理系の学部を卒業していない場合であっても、産業カウンセラー養成講座を修了することで資格取得を目指すことが可能です。
ただし、産業カウンセラーは知名度の高い資格ではあるものの、国家資格ではないため、自身の身に付けたいスキルやキャリアプランに合わせて資格取得を検討するとよいでしょう。
\ キャリアの悩みは専門家へ相談! /