貿易事務の仕事は物流・通関業者や海外と取引を行う専門商社など、様々な企業で求められていますが、資格が必須の職業ではありません。そのため、無資格の人でも貿易の実務に携わることは可能です。
ただし、より専門的な知識やスキルを身に付け、転職活動や社内のキャリアアップを有利に進めていくためには、資格取得が非常に有効です。
そこで本記事では、貿易事務の仕事をするにあたって、より専門性の高いスキルを身に付けていくために役立つ資格をご紹介します。貿易事務の仕事の質を上げるために役立つ資格になるので、是非ご確認ください。
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貿易事務に求められるスキルと知識
貿易事務の仕事は一般的な事務職とは違って特有の知識やスキルが求められる仕事です。
海外との取引や、貿易・通関業務に関する専門的な知識が求められる職業のため、活躍するためには様々なスキルが求められます。貿易事務に求められる主なスキルは以下の通りです。
- 貿易に関する知識
- 通関業務に関する知識
- ビジネス英語スキル
- PCを使用した事務処理スキル
上記を見ると分かるように、貿易事務は非常に広い専門性を必要とされる仕事です。未経験でも挑戦できる職業なので、実務経験を積みつつ知識を身に付けることも可能ですが、上記のスキルをひとつも持っていない状態では就職自体が難しいケースも多いでしょう。
そこで、貿易事務に求められるスキルを効率よく取得できる資格について、詳しく解説していきます。
貿易事務に役立つ資格4選
貿易事務は未経験・無資格でも挑戦可能な職業ですが、専門的な知識を求められる業界のため、活躍していくには資格取得等を通して事前に知識を身に付けておくのがオススメです。
上記の資格は貿易事務未経験の方はもちろん、これからスキルアップ・キャリアアップを目指す経験者の方にもオススメの資格です。
それぞれの資格の特徴や資格取得の難易度について、詳しく解説していきます。
貿易実務検定
貿易実務検定はその名の通り「貿易に関する実務能力」を測る検定試験です。受験者のレベルに合わせてA級・B級・C級の3つの試験が用意されており、合格することで貿易に関する自身のスキルを証明することが出来る資格です。
貿易実務検定に関する主な情報は以下の通りです。
資格名 | 貿易実務検定 |
---|---|
試験団体 | 日本貿易実務検定協会(JTBA) |
難易度 | C級:簡単 B級:普通 A級:難しい |
特徴 | 貿易実務に関する知識とスキルを証明可能 |
受験資格 | 誰でも受験可能 |
費用 | C級:6,270円(税込) B級:7,480円(税込) A級:12,760円(税込) |
貿易実務検定は貿易に関する仕事における代表的な資格で、約25万人が受験申込(2023年5月時点)を行っている認知度の高い検定試験です。
資格取得を通した学習の中で、貿易に関する法律や税務、書類や外国為替に関する知識を学ぶことが出来るので、貿易事務未経験の人は勿論、これからスキルアップを目指す経験者の人にもおすすめの資格です。
貿易実務検定の取得難易度
貿易実務検定はA級・B級・C級の3つのランクに分かれており、それぞれ求められるレベルに応じて難易度が異なります。貿易実務検定の難易度と求められるレベルは以下の通りです。
級 | 難易度 | 合格率 | レベル |
---|---|---|---|
貿易実務検定A級 | 難しい | 約38% | 上級レベル 貿易実務における判断を伴う仕事が可能 3~4年以上の実務経験 |
貿易実務検定B級 | 普通 | 約45% | 貿易実務における中堅層 1~3年以上の実務経験 |
貿易実務検定C級 | 簡単 | 約63% | 1~3年以上のレベル 定型業務をこなすことが可能 |
参照:貿易実務検定の難易度詳細はコチラで解説
貿易事務に関する仕事をしたことが無い、もしくは経験が浅い人はまずはC級の合格を目指すとよいでしょう。
既に貿易に関する実務経験がある人は、B級~C級の試験に挑戦し、自身の実力を確認しつつスキルアップを狙うのがおすすめです。
貿易実務検定の資格取得のメリット
貿易事務に関する仕事を行うにあたり、貿易実務検定は代表的な資格といえます。そのため、
- 貿易に関する基本的な知識が身につく
- 就職・転職活動に有利
貿易事務の仕事は専門用語が多く、知識として知っておかないとコミュニケーションをとり辛い場面がよくあります。ですが、貿易実務検定を取得することで、貿易に関する基本的な知識を一通り身に付けることが出来るため、未経験の方は積極的に挑戦するとよいでしょう。
また、貿易事務経験者の人であればB級・A級を取得することで社内のキャリアアップや転職にも活かすことが可能です。
貿易実務検定は貿易事務の仕事を行う上で非常に有用な資格のひとつなので、貿易業界で活躍したい人は是非挑戦してみるとよいでしょう。
通関士
通関士は海外との輸出入を行うにあたって必須の「通関業務」を行う専門家で、通関業法に定められた国家資格です。
貿易関連の仕事の中でも「通関業務」という専門領域を持った資格のため、貿易事務の経験を活かしてキャリアチェンジ・キャリアアップを目指している人にオススメの資格です。
通関士資格の主な情報は以下の通りです。
資格名 | 通関士 |
---|---|
試験団体 | 税関 |
難易度 | 難しい |
特徴 | 国家資格 ニーズの高い独占業務有り |
受験資格 | 誰でも受験可能 |
費用 | 3,000円 (オンライン申し込みは2,900円) |
通関業者には通関士の設置が義務付けられていることに加え、「通関書類の審査」「通関書類への記名」等の独占業務を持っているため、貿易業界の中でも非常にニーズの高い資格といえます。
そのため、専門的スキルを磨いて更にスキルアップしたいと考えている人や、貿易事務のプロフェッショナルになりたいと考えている人にオススメの国家資格です。
参照:e-GOV「通関業法(昭和四十二年法律第百二十二号)」
通関士の取得難易度
通関士の合格難易度は非常に高く、合格率は15~25%程度となっています。
資格名 | 難易度 | 合格率 |
---|---|---|
通関士 | 難しい | 約15~25% |
参照:通関士の難易度詳細はコチラで解説
通関士試験の合格ラインに達するためには400~500時間の勉強が必要なことに加え、国家試験は年に1回しか実施されていないため、不合格になったら再挑戦は1年後となってしまいます。
通関業法や関税法等の独特の法律知識が求められることに加え、通関実務における申告書作成などが試験に組み込まれていることが、試験難易度を引き上げているといえるでしょう。
試験難易度が高く合格者が少ないことで、資格取得者は貿易業界、特に通関業者における就職・転職に非常に有利になる資格といえるでしょう。
TOEIC
海外との取引を行う貿易事務の仕事において、英語力は非常に役立つスキルです。英語力を鍛えることで書類の処理や顧客や取引先とのコミュニケーションを円滑にすることが出来るので、貿易事務におけるコアスキルといえます。
ビジネス英語のスキルを証明するための代表的な資格であるTOEICについて、基本情報をいかに記載します。
資格名 | TOEIC |
---|---|
試験団体 | IIBC(一般社団法人国際ビジネスコミュニケーション協会) |
難易度 | 点数による |
特徴 | ビジネス英語における認知度の高い資格 |
受験資格 | 誰でも受験可能 |
費用 | 7,810円(税込) |
就職する職場にもよりますが、海外の取引先との書類やメールによるやり取りは基本的に英語で行われます。ただし、電話や対面で英語が必要になるケースは多くはないため、ライティング・リーディングのスキルを重点的に身に付けておく必要があるでしょう。
貿易事務に求められるTOEICスコアの目安
貿易事務の求人における就職・転職活動に有利になる目安として、700点以上獲得していれば英語を使用する求人へ採用される確率を上げることが出来るでしょう。
ただし、今はWEBの翻訳サービス等を活用することで、テキストによる英語コミュニケーションは問題なく出来ることが多いでしょう。
そのため、自身が就職したい企業や自身の目標に合わせて、TOEIC受験の有無や目指すべき特典を設定するのがおすすめです。
MOS
これから貿易事務の仕事を目指す人にオススメな資格のひとつとして、MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)が挙げられます。
MOSはオフィスソフトで非常に有名なマイクロソフト社が主催する資格試験で、Excel・Word・PowerPoint等のスキルを証明することが可能な試験です。
貿易事務の仕事は基本的に事務所の中で完結するものが多く(通関業務を除く)、一定以上の事務処理能力が求められます。もし仮に、豊富な法律知識と高い英語力があったとしても、肝心の事務処理能力が低ければどうしても仕事が遅くなってしまいます。
既に貿易事務の経験がある人にとっては重要度の低い試験ですが、事務職の経験がない(もしくは薄い)人には、特におすすめの資格といえるでしょう。
資格名 | MOS |
---|---|
難易度 | 簡単 |
特徴 | マイクロソフトのオフィス製品の捜査スキルを証明可能 |
受験資格 | 誰でも受験可能 |
費用 | 10,780~12,980円 ※試験科目による |
目的別おすすめ資格
貿易事務に関する資格取得を目指す場合、その目的に合わせて取得する資格を選ぶことが重要です。
ここでは以下の目的に合わせた取得するべき資格とその理由を解説していきます。
目的に合っていない資格取得は、中期的キャリアの視点で見ると遠回りになってしまうので、注意しておきましょう。
貿易関連の知識を身に付けて活躍したい人にオススメの資格
「貿易に関する知識を身に付けたい」「輸出入の専門家になりたい」と考えている人には、貿易実務検定、もしくは通関士の資格がおすすめです。
貿易の仕事は非常に高い専門性と倫理観が求められる仕事であり、輸出入を通して日本の経済を支える「なくてはならない仕事」です。
貿易に関する法律や仕組みは複雑なものが多く、貿易関連法令や税務、通関に関する知識と実務経験を得ることで、代替が難しいプロフェッショナル人材を目指すことが可能です。
貿易に関する専門性を高めて仕事をしたい人は貿易実務検定・通関士の資格取得がおすすめといえるでしょう。
英語力を活かして働きたい人にオススメの資格
貿易事務の仕事に強いこだわりが無く、「英語を活かした仕事をしたい!」「将来は海外で働きたい」と考えている人の場合は、TOEIC取得を目指すのがおすすめです。
TOEICはビジネス英語スキルを測る認知度の高い試験のため、英語量を求められる求人において一定以上の特典を条件とすることも多い資格です。
英語力を活かして仕事をしたい、と考えている人は、まずはTOEICの高得点(700点以上)を目指すとよいでしょう。TOEICの勉強をしつつ貿易事務の仕事を通して英語に触れることで、ビジネス英語スキルを更に磨くことが可能となります。
事務スキルを高めたい人にオススメの資格
事務の仕事が未経験、もしくは経験が浅い人が、「貿易事務の仕事を通して事務スキルを磨きたい!」と考えている場合、MOSの取得を目指すとよいでしょう。
MOSを取得することで、ほとんどの会社で使用しているマイクロソフトのオフィスソフトの操作スキルを証明できるので、転職の際に役立つだけではなく日常的に業務の際にも活かすことが出来ます。
貿易事務に限らず、「事務の仕事をしたい」と考えている人は、「秘書検定」や「美辞ねs実務マナー検定」等の取得を通して勉強するのもオススメです。
ただし、RPAやAI普及に伴って単純な事務職は減っていく、もしくは待遇が今よりも更に上がり辛くなることが予測されるため、注意しておきましょう。
貿易事務に転職する際の注意点
貿易事務の仕事はその専門性・特殊性から、いくつか注意点があります。貿易事務の求人に未経験で転職する場合は、以下の点に注意しておきましょう。
- 貿易に関する専門用語を日常的に使う
- 最低限の英語スキルが必要
貿易に関する仕事が完全に未経験・無資格の場合は、最初は分からない言葉がたくさん出てくるでしょう。OJTや研修がしっかりしている会社であれば業務を通して学ぶことも可能ですが、そうじゃない場合は自身で勉強しつつ仕事を覚える必要があります。
また、英語のメールや書類の対応を行う必要があるため、最低限の英語スキルは必要になることも理解しておいた方がよいでしょう。
貿易事務の主な活躍場所
貿易事務の仕事は主に以下のような活躍場所があります。
- 運送会社
- 船会社
- 航空貨物代理店
- フォワーダー
- 通関業者
- 商社
- 企業の購買部門
ひとことで「貿易事務」と言っても、国際輸送に関わる手続き全般を行うフォワーダーや、船会社や航空貨物代理店まで様々な就職先があります。なかには企業の購買部門が貿易実務に関する業務を行う場合も有り、非常に幅広い活躍フィールドがあります。
同じ貿易事務の仕事であっても、就職先によって求められるスキルや業務内容は異なるので、自身がやりたい仕事や働き方、将来設計に合わせて就職・転職先を選ぶ必要があります。
また、取引先によっては英語以外の語学力を求められるケースも有るので、中国語などのスキルがある人はそういった職場を探してみるのもいいでしょう。
貿易事務に役立つ資格に関するよくある質問
ここでは貿易事務関連の資格について、よくある質問に対する回答を記載いたします。
- 貿易事務の仕事は無資格でも出来ますか?
-
貿易事務の仕事は無資格でも就職することが可能です。ただし、求人によっては貿易実務検定や英語スキルが求められるケースも有るので注意しておきましょう
- 貿易事務の仕事は事務職未経験でも出来ますか?
-
事務未経験でも挑戦することは可能ですが、MOS資格などの取得してオフィスソフトの扱いに慣れておくと就職に有利になる可能性があります。
- 貿易事務の仕事に英語は必要ですか?
-
英語の書類やメールに対応するため、最低限の英語スキルは必要になります。求められる英語スキルのレベルは求人によって異なるので、貿易事務の仕事に就く際には求人をしっかり確認しておきましょう。
貿易事務の仕事に役立つ資格まとめ
貿易事務の仕事は未経験・無資格でも始められますが、貿易実務検定や通関士などの資格を取得することで、転職やキャリアアップを有利に進めることが出来ます。
これから貿易事務の仕事に就く人は「貿易実務検定C級」、既に貿易事務の仕事をしていてスキルアップを目指したい人は「貿易実務検定A級」「通関士」等の資格取得を目指すのがおすすめです。
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