栄養士の年収はどれくらい?給料が安い理由や収入アップの方法を解説

栄養士の年収は?給料が安い理由や収入アップの方法を解説
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栄養士の平均年収は約380万円となっており、日本の平均年収に比べると低い水準です。そのため、就職したものの、待遇面における理想と現実のギャップに悩む栄養士も少なくありません。

この記事では、栄養士の年収を分析するとともに、月収や収入アップの方法について解説します。

栄養士は、年収は決して高くない職種ですが、「食」の分野を極めた社会貢献性の高い専門職です。効果的に年収アップをねらい、やりがいや頑張りに見合った収入を目指しましょう。

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目次

栄養士の年収は?

栄養士の平均年収と、日本の給与所得者の平均年収を比較してみましょう。

年収
栄養士380.5万円
日本平均年収458.0万円
栄養士の年収と日本の平均年収
参照:国税庁「民間給与実態統計調査結果」
 参照:政府統計の総合窓口e-stat「職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」

栄養士の平均年収は、令和5年の「賃金構造基本統計調査」をもとに算出した結果は約380万円で、日本の平均年収より70万円ほど及ばない結果となりました。

もちろん働く地域や施設形態によって差はありますが、この結果を見る限りでは、残念ながら栄養士の年収は「低い」といえるでしょう。

ここからは、働く現場の規模や、経験年数、年齢別に詳しくみていきます。

栄養士の企業規模別年収

  まずは、栄養士の給与を働く企業の規模別に分析します。下表は企業規模別の栄養士の収入比較表です。

企業規模月給 (所定内給与額)賞与 (年間賞与その他特 別給与額)年収 (月給+賞与)
企業規模10人以上25.6万円68.5万円375.7万円
企業規模10~99人25.1万円66.8万円368.0万円
企業規模100~999人25.6万円65.8万円373.0万円
企業規模1,000人以上26.2万円74.6万円389.0万円
企業規模別栄養士の年収
参照:政府統計の総合窓口e-stat「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」

上表を見ると。企業の規模が大きくなるにつれて、栄養士の給与も多くなる傾向にあることがわかります。

これは、企業の規模が大きいほど業務が複雑になったり、大企業の食品メーカーや研究職では比較的好待遇であったりすることが理由といえるでしょう。

「栄養士」と一言に言っても、働く企業や現場によって業務内容はさまざまです。栄養士としての転職を考える際は、企業規模や特色も参考にすることで、より幅広い選択ができるでしょう。

栄養士の経験年数別年収

 続いて、栄養士の年収を、経験年数別にみていきましょう。

経験年数月給 (所定内給与額)賞与 (年間賞与その他特 別給与額)年収 (月給+賞与)
0年21.6万円23.6万円336.8万円
1~4年23.1万円53.7万円330.9万円
5~9年24.5万円64.7万円358.7万円
10~14年25.9万円75.3万円386.1万円
15年以上29.1万円89.2万円438.4万円
経験年数別栄養士の年収
参照:政府統計の総合窓口e-stat「職種(小分類)、性、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」

経験年数とは、栄養士としての実務経験の年数を表します。上表を見ると分かるように、他業種と同様、専門職である栄養士も長く勤めることで実力が給与として反映される傾向にあります。

栄養士として収入アップを目指すのであれば、まずはキャリアを途切れさせないことが大切です。転職の有無にかかわらず、栄養士としての経験を積むことが、年収として評価されるポイントになることは間違いありません。

近年、働き方の多様化や休暇制度の充実によって、キャリアを途切れさせない働き方が選べるようになりました。時代に合った働き方を選択し、栄養士としてのキャリアの充実を目指すことで、給料として評価してもらうきっかけをつかみましょう。

栄養士の年齢別年数

栄養士の年収を、年齢別に分析します。

年齢月給 (所定内給与額)賞与 (年間賞与その他特 別給与額)年収 (月給+賞与)
20~24歳21.2万円32.2万円286.6万円
25~29歳23.1万円54.7万円331.9万円
30~34歳24.5万円68.4万円362.4万円
35~39歳26.1万円72.3万円385.5万円
40~44歳26.3万円75.6万円391.2万円
45~49歳28.5万円83.6万円425.6万円
50~54歳29.4万円94.1万円446.9万円
55~59際34.0万円111.9万円519.9万円
60~64歳26.1万円69.8万円383.0万円
65~69歳24.9万円41.8万円340.6万円
70歳~24.5万円17.6万円311.6万円
年齢別栄養士の年収
参照:政府統計の総合窓口e-stat「職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」

キャリアが成熟する50〜59歳では500万円を超え、日本の平均給与を上回るものの、それまでには長い下積み時代が必要といえるでしょう。

栄養士は企業規模にもよりますが、たとえば病院などでは介護士や看護師に比べ圧倒的に配置人数の少ない職場がほとんどです。

役職がつきにくく、キャリアアップを評価されにくい点からも、飛び抜けた昇給や年収アップは難しく、経験や勤続年数が評価される傾向にあります。

栄養士の給料が安い理由

栄養士の給料が安いのは、業務独占資格でなかったり、利益を上げる業種でなかったりすることが原因と考えられます。

専門性の高い国家資格でありながら、「食事」という身近な分野であることで、「誰にでもできる」と認知されやすく、給料へ反映されにくい側面があります。

ここからは、栄養士の給料が安い理由を具体的に以下の3つについて解説します。

原因を理解することで自分のキャリアを見直し、5年後・10年後の自分の目指す方向性を考えるのに役立てましょう。

業務独占資格ではない

栄養士は「業務独占資格」ではなく、「名称独占資格」です。そのため、「誰にでもできる仕事」と認識されることで給料が安くなる傾向にあります。

名称独占資格とは、その資格の名称を名乗らなければ業務をおこなえる資格です。栄養士の職務は基本的に「栄養士」と名乗りさえしなければ、資格がなくても業務ができてしまいます。

たとえば、栄養指導は栄養士・管理栄養士だけの仕事ではなく、必要に応じて医師が栄養指導をおこなうような場合です。

業務独占資格は、資格を持っている人だけが独占的にその業務を遂行できることが法律で規制されています。それに対し、業務に資格を必要としない名称独占資格は「誰にでもできる仕事」と認識されがちであるため、他の資格より給料が安く設定される場合があるでしょう。

栄養士の努力による利益確保が困難

病院や福祉施設で働く栄養士の仕事は利益を上げるのが難しく、給料が上がりにくい場合があります。給食業務は、与えられた金額の中でいかにやりくりするかを求められるため、目に見えた成果を経営側に実感されにくく、評価につながらないことがあるためです。

たとえば、病院で働く栄養士は給食費を扱います。給食費はほとんどの病院で1食あたりの金額を固定しており、食事の回数、病床数には上限があるため、栄養士が売り上げをコントロールすることは不可能です。

そのため、評価を得るには、喫食者の満足度や赤字にならない運営管理、日ごろの衛生管理による事故防止などが主な評価のポイントとなるでしょう。

しかし、満足度やトラブルの防止といった形のない成果は、利益などの実質的な成果より評価しにくく、給料が上がりにくい原因となってしまいます。

同じ職場でキャリアアップを目指すのであれば、こまめな心遣いや、患者や職員とのコミュニケーションを通して、日々の努力をアピールする必要があるでしょう。

管理栄養士の数が増え続けている

管理栄養士の数が増え続けることは、栄養士の年収にも大きく影響します。なぜなら管理栄養士は施設によっては必置義務があったり、業務の幅が広く栄養士の業務をカバーできたりすることから、「絶対に必要」なポジションを管理栄養士に取られがちなためです。

他にも、栄養士の業務は、主に健康な人を対象に栄養指導や給食の運営をおこなうのに対し、管理栄養士は、それに加えて傷病者や高齢者などの特別な栄養管理に携わることができ、医師の指示による栄養指導は診療報酬の算定対象にもなります。

たとえば、病院を運営するために利益を上げなければならない場合だと、利益の見込めない給食運営だけを管理する栄養士より、栄養指導で加算のとれる管理栄養士の方が病院の収入に貢献してくれる期待が持てますよね。

管理栄養士が増え続けることで、絶対的なポジションを埋められ、栄養士の給料は上がりにくくなってしまうのが現状です。

しかし、令和4年度の栄養士の有効求人倍率は2.47と高く、栄養士・管理栄養士の確保にどこの企業も苦戦しており、今後もニーズが高い職種と予想されています。資格を活かした転職には有利な環境であることを利用しつつ、給料アップやキャリアアップを目指していくとよいでしょう。

参照:厚生労働省職業情報提供サイトjobtag「栄養士 有効求人倍率」

栄養士として年収アップするための方法

栄養士として年収をアップさせるには、上位資格である管理栄養士資格を取るか、より良い条件の職場への転職がおすすめです。

先ほども触れたように、栄養士は実質的な利益が上げにくく、1つの職場に長く勤めても給料へ反映されにくい側面があるからです。ここからは、栄養士の年収アップの方法を具体的に解説していきます。

自分のやりがいやキャリアを見つめなおし、効果的に年収アップを目指しましょう。

管理栄養士の資格を取得する

管理栄養士の資格を取得することで、栄養士よりも給料がアップする可能性があります。

管理栄養士は栄養士の上位資格であることから、資格手当の部分で栄養士よりも高額になるため、栄養士と管理栄養士では給料に差が出る職場がほとんどです。

資格手当の差を、求人情報を元に比較してみましょう。

栄養士資格手当管理栄養士資格手当
A社 (給食委託会社)1万円3万円
B事業所 (多機能型事業所)1万円~~2万円
C法人 (病院)1万円1.5万円
栄養士資格手当と管理栄養士資格手当の比較(目安)
参照:ハローワークインターネットサービス

このように、栄養士と管理栄養士では手当に差を設けている企業も少なくありません。管理栄養士の資格を取ることで、キャリアアップと同時に給料アップも十分望めるでしょう。

また、資格手当に決まった金額はなく、栄養士・管理栄養士の両方を募集していても求人票には明記していない企業もあります。より良い条件での転職を目指すのであれば、管理栄養士の資格の有無による手当の違いもしっかり分析することがおすすめです。

>管理栄養士の難易度・合格率の解説はコチラ

年収の高い職場へ転職する

キャリアを生かし、より年収の高い職場へ転職するのも、年収アップの方法として有効です。

栄養士は職場によって待遇にも幅があり、勤続年数が評価されやすい傾向にあることから、1つの職場で地道にキャリアを積むより、転職によって好待遇を勝ち取るほうが、確実に年収を上げられる場合があります。

 業界別の栄養士の年収を比較してみましょう。

栄養士の就職先給料(参考値)
病院・クリニック18.5~25.5万円
高齢者施設15.0~21.3万円
食品会社16.7~26万円
給食委託会社18.5~27万円
就職先別栄養士の給料
参照:ハローワークインターネットサービス

高齢者施設や児童施設などの福祉に関する分野より、病院やクリニックといった医療にかかわる職場では、より専門的な知識を必要とする面から、比較的好待遇な場合があります。

給食委託会社は、平均して給料がよい傾向にありますが、病院や保育所、学校などさまざまな現場に対応しなければならず、引っ越しをともなう転勤が発生する場合も覚悟しておくべきでしょう。

食品会社では、製品の菌検査や開発といった業務を担当します。会社員として利益を追求するなど、給食業務とは違った業務内容になります。

働く職場によって、栄養士の業務もさまざまです。

年収アップのみでなく、業務内容ややりがい、自分の適性を十分に検討しながら、より待遇のよい職場への転職を目指しましょう。

>栄養士の就職先や職場選びのポイントはこちらで解説

栄養士の主な就職先

栄養士は、病院や高齢者施設といった給食を提供する場だけでなく、食品会社での研究開発や企業に所属するスポーツ選手の栄養管理など、さまざまな場所で活躍しています。

業務内容は就職先によって異なり、高度な栄養管理の知識を必要とするところから、実際に調理に携わる業務まで、必要とされる能力もさまざまです。

栄養士の主な就職先は以下の通りです。

自分のキャリアや得意とする分野と照らし合わせ、自分の目指す栄養士像を描きましょう。

>栄養士の就職先や職場選びのポイントはこちらで解説

病院

病院やクリニックで働く栄養士の主な業務内容は、患者の栄養管理や回復のサポートのための給食提供です。

病院の食事では、一人ひとりの年齢や体重、病態を考慮した食事が提供されます。栄養士は、医師の指示によって決められた栄養価を守りつつ、患者が安心して食べられる献立を考えたり、食材の管理をしたりすることが主な業務です。

また、管理栄養士であれば、患者の病態に応じた食生活や栄養の指導をおこないます。

入院中は面会もままならず、ベッドの上で1日過ごさなければならない患者にとって、食事は何よりも楽しみな時間です。食事によって患者が安心して回復に専念できるようサポートすることが、病院栄養士の使命であるといえるでしょう。

高齢者施設(介護施設)

高齢者施設での栄養士の業務は、利用者の健康管理のための食事提供です。

個人の栄養状態に応じたカロリー設定はもちろん、食べやすいように刻んだり、ゼリー状に加工したり、消化吸収を助けるためにミキサーにかけたり、形態への配慮もおこないます。

病院と違い、福祉の現場では食事の「楽しみ」にも重点を置きます。季節の行事や旬の食材の利用、イベント食や手作りおやつにも力を入れており、調理の現場だけでなく介護士など他職種の職員とも協力しながら、入居者が楽しみに感じるような食事を目指す職場です。

食品会社

食品会社の栄養士は、商品開発や品質管理などを通して、一般の消費者の食生活を支える業務を担います。

開発する商品によっては、見た目や味、栄養機能など消費者目線の幅広いニーズに対応するため、深い知識やマーケティング能力を必要とします。

食品会社で働くには、食への深い知識と商品を追求する探究心が求められるでしょう。食品メーカーは、病院や福祉施設に比べて求人も少なく競争率も高い業種ですが、多くの消費者の食生活を支えるやりがいのある仕事でもあります。

行政機関

行政機関で働く栄養士は、住民への栄養指導や各飲食業への衛生指導、学校給食の栄養管理などの地域住民の健康維持に貢献する役割があります。

管轄する自治体に暮らす全ての住民が対象であり、健康状態や生活環境もさまざまな住民の暮らしを守るための支援をおこないます。

 また、災害時や非常時の対応も大切な業務の一つです。食料の備蓄や救援体制の整備も行政の栄養士が担う自治体もあります。

行政栄養士の最大のメリットは地方公務員ならではの待遇の良さです。安定した業務内容と福利厚生は、長くキャリアを続けるうえで大きなメリットを得られるでしょう。

>栄養士の就職先や職場選びのポイントはこちらで解説

栄養士の年収まとめ

栄養士の給料は、比較的低く社会的ポジションの低い職種と認識されがちですが、キャリアや経験を積みながらスキルアップを目指せる立派な国家資格です。

栄養士の年収は約380万円で、日本の平均給与より低いが、スキルを磨くことで年収アップが見込めます。また、栄養士の昇給は、経験年数やさらなる資格の取得などのスキルアップが評価されやすいといえるでしょう。

現在、栄養士の有効求人倍率が高いことから、1つの職場で昇給を目指すより、スキルアップでより条件の良い職場を求める方が、年収をアップさせられる可能性が高いといえます。就職先の施設形態によって待遇に差があるが、それぞれ業務内容が異なるため、自分のキャリアや適性に合った転職活動が大切

「栄養士でしっかり収入を得たい」と思うのであれば、まずは経験を積む中でやりがいや自分の適性を分析することが大切です。そして、今の職場で地位を確立するか、やりたいことやスキルをしっかりアピールし、好条件の転職を果たすことで、確実に年収アップを実現できるでしょう。

いずれにせよ、「栄養士」と名乗る以上、どの業務も責任を持って成し遂げるための積み重ねが、年収アップへの第一歩です。対象者や社会に貢献できる仕事を目指しつつ、自分の目指す「栄養士」を実現させましょう。

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